近年、働き方改革の流れを受けて、副業を認める企業は増加傾向にあります。周囲でも、「副業を始めた」「副業を考えている」という声を耳にする機会が以前より増えました。では、実際に副業をしている人はどのような仕事で収入を得て、どのくらい稼いでいるのでしょうか。

本記事では各種の調査データをもとに、副業市場の現状と「月5万円」を稼ぐための働き方を見ていきます。そのうえで、会社員の収入事情をふまえ、副業がこれから当たり前になっていくのかを考察します。

副業解禁はどこまで進んだのか

副業が広く注目されるきっかけになったのは、2017年の「働き方改革実行計画」に始まる国の方針転換です。これを受けて厚生労働省は2018年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、副業・兼業を促進する方向性と、労働時間の管理や健康確保などの留意点を示しました。あわせてモデル就業規則について、それまで原則禁止としていた副業・兼業を原則として認める内容にあらためました。

パーソル総合研究所「第4回 副業の実態・意識に関する定量調査」によると、社員の副業を認める企業の割合(副業容認率)は2025年調査では64.3%で、2018年調査の50.9%から13.4ポイント上昇しています。

インディードリクルートパートナーズ「兼業・副業に関する動向調査2024」でも、従業員の兼業・副業を認める制度がある企業は60.7%と、2020年調査の49.5%から年々増えています。いずれの調査でも、社員の副業を認める企業は6割を超える結果となりました。

変化は、働く側にもあらわれてきています。前出のパーソル総合研究所の調査では、正社員の副業実施率は2018年の10.7%から2023年の7.0%まで年々下がりつづけていました。しかし、2025年は2023年から4.0ポイント上昇し、2018年の調査開始以来最高の11.0%となりました。

副業人材を社外から受け入れる企業の割合(副業受入率)も年々上がって2025年は29.1%に達し、副業をする人と副業人材を活用する企業の双方が増えています。

副業を行う理由を見ると、「副収入を得たい」「本業の収入だけでは不十分」といった収入面の理由が依然として上位を占める。ただし、そのスコアは2023年調査より下がり、「副業で好きなことをやりたい」「自分のスキルが他の場所でも通用するか試したい」といった理由が伸びています。

副業を認めない企業も一定数ある

ただし、副業解禁が一様に進んだわけではありません。株式会社みらいワークスが大企業の人事・労務担当者500名を対象に行った「副業・兼業に関する人事制度の実態調査2026」では、副業・兼業を一切認めていない企業が25.6%で、前年の調査の26.0%からほぼ横ばいでした。一方で、「原則自由」は前年の7.4%から9.0%に増え、「現在は禁止だが新制度を整備中」という企業も19.8%を占めました。

ここまでのデータをまとめると、副業を認める企業は増えているものの、大企業の4分の1ほどは今も副業を一切認めていません。実際に副業をしている正社員の割合も伸びてはいるものの、まだ1割程度にとどまります。会社員の副業は以前より身近になった一方で、「一般的になった」とまではいえないのが実情でしょう。

「月5万円」は可能? 副業収入のリアル

では、副業をしている人は実際にどれほど稼いでいるのでしょうか。参考になるのが、転職サービスdodaが行った「副業の実態調査【最新版】」です。2023年に20〜59歳の正社員1万5,000人を対象に行われたこの調査によると、副業の平均月収は6万5,093円で、2022年の5万1,218円から1万3,875円増えました。年代別では、40代以上が9万6,564円と高く、全体の平均を押し上げています。

平均だけを見ると、「月5万円」は多くの人が達成している金額に思えます。しかし、分布を見てみるとその印象は変わります。同調査で副業の月収をたずねたところ、もっとも多かったのは「1万円未満」の48.1%で、副業をしている人のほぼ半数を占めました。月5万円以上を得ている人は23.8%で、およそ4人に1人にとどまります。一部の高収入層が平均値を引き上げています。

平均が実態より高く出る傾向は、ほかの調査結果にもあらわれています。Job総研が20〜50代の社会人357人を対象に行った「2025年 副業・兼業の実態調査」によると、副業経験者の月収は平均5万4,000円でしたが、中央値は3万円、最頻値は1万円でした。どちらの調査を見ても、副業収入は月数千円から数万円程度の人が多く、月5万円を稼ぐ人は多数派とはいえません。

一方で、同じJob総研の調査で回答者全体に「副業で得たい理想の月収」をたずねると、平均は10万8,000円、中央値と最頻値はいずれも5万円でした。月5万円は、実際に得ている収入の中央値3万円を上回る一方、理想の月収として多く挙げられた金額です。

副業で稼ぐ人はなにをしている?

実際に月5万円を稼いでいる人は、どのような仕事で収入を得ているのでしょうか。月5万円を稼いでいる人だけに絞ったデータは見当たりませんが、前出のdodaの調査でもっとも多かった副業は「サービス業(接客・販売)」の21.3%でした。そして、「株/FX」の18.4%、「ネットビジネス(通販・アフィリエイト・ネットショップ運営)」の10.6%がつづきます。

ほかにも「講師/家庭教師/試験監督」「事務作業」「ホームページ・CGなどの制作」「マーケティング・広報・編集・ライター」など、仕事の内容は幅広いです。副業に取り組む時間は「休日」が71.2%ともっとも多く、ついで「勤務終了後」が44.1%となっています。

では、月5万円を稼ぐにはどのくらいの時間が必要なのでしょうか。前出のパーソル総合研究所の調査によると、副業の時給は2025年調査で平均3,617円、中央値2,083円で、1カ月あたりの副業活動時間は平均23時間でした。

中央値の時給2,083円をもとに単純計算すると、月5万円を得るには約24時間が必要になります。平均時給の3,617円なら約14時間、週3〜4時間ほどで届く計算です。ただし、実際の収入は副業の種類や単価、確保できる時間などによって異なります。

月5万円をひとつの目安とする場合も、自分の副業の単価と確保できる時間をもとに考える必要があるでしょう。

稼ぎ方で分ける副業の4タイプ

時給と時間のどちらを工夫しやすいかは、副業の種類によって異なります。ここからは、dodaの調査で挙がった副業を、稼ぎ方のちがいをもとに4つのタイプに分けて見ていきましょう(タイプの分け方や名称は筆者によるもので、公的な分類ではありません)。

【1】時間提供型(接客・販売、軽作業など)

dodaの調査でもっとも多い「サービス業(接客・販売)」のほか、「警備/軽作業」「運送/配達」などがこのタイプです。特別なスキルがなくても始めやすく、働いた時間に応じて確実に収入が得られます。一方で、時給は大きく上がりにくいです。仮に時給1,200円とすると、月5万円には約42時間、週10時間ほどの勤務が必要になります。

【2】制作型(Web制作、ライター、プログラミングなど)

仕事の成果物を納め、その対価として報酬を得るタイプの副業です。dodaの調査の「ホームページ・CGなどの制作」「PC・回線設定/プログラミング」や、「マーケティング・広報・編集・ライター」のうち記事の執筆や編集などが当てはまります。

報酬は作業時間ではなく成果物に対して支払われるため、作業に慣れたり、単価の高い案件を受けたりするほど、短い時間で稼げるようになります。仮に時給3,000円相当で受注できれば、月5万円は約17時間で届く。ただし、始めたばかりのころは単価が低く、実績づくりに時間がかかることもあります。

【3】知識提供型(講師、家庭教師など)

本業や趣味で培った知識や経験を、人に教えたり助言したりして報酬を得るタイプの副業です。dodaの調査では、「講師/家庭教師/試験監督」が前回調査からもっとも割合を伸ばした。語学やITスキル、楽器、スポーツなど、教えられる分野は幅広いです。専門性や経験が深いほど、高い単価を得やすい傾向にあります。

【4】ストック型(ネット販売、ブログなど)

「ネットビジネス(通販・アフィリエイト・ネットショップ運営)」や「ハンドクラフト(手作り)品の販売」などが該当します。働いた時間と収入が比例せず、仕組みができれば少ない時間で収入を得られる可能性があります。その反面、収益が出るまでに時間がかかることも珍しくなく、月5万円に届く保証はありません。

このように、4つのタイプは稼ぎ方がそれぞれ異なり、月5万円までの道のりも一様ではありません。すぐに収入が必要なら「【1】時間提供型」、時間を抑えたいなら「【2】制作型」や「【3】知識提供型」、ビジネスを長期的に育てたいなら「【4】ストック型」と、自分の状況に合わせて選ぶことができます。なお、dodaの調査で2番目に多かった「株/FX」は、働いて得る収入とは性質が異なるため、ここでは取り上げていません。

副業は「当たり前」になっていくのか

ここまで見てきたように、副業を認める企業も、実際に副業をする正社員も増えています。では、副業はこの先、会社員にとって当たり前の働き方になるのでしょうか。

副業を行う理由として多いのは、「本業の収入だけでは不十分」といった収入面のものです。厚生労働省が2026年9月に公表した「毎月勤労統計調査」の7月分速報によると、物価の上昇分を差し引いた実質賃金は、7カ月連続で前年同月を上回りました。

しかし、日本銀行が2026年7月に公表した「生活意識に関するアンケート調査」では、現在の暮らし向きは1年前と比べて「ゆとりがなくなってきた」と答えた人が55.0%にのぼり、「ゆとりが出てきた」は4.8%にとどまりました。統計上の賃金が改善しても、物価高の負担を感じる人はなお多いです。収入を補う手段としての副業は、今後も必要とされるでしょう。

また、副業を選ぶ理由は収入面だけではありません。前出のパーソル総合研究所の調査では、「好きなことをやりたい」「スキルが通用するか試したい」といった理由も伸びていました。収入を補うためと、キャリアの選択肢を広げるため。この両面から、副業を選ぶ人は今後も増えていくと考えられます。

ただし、課題もあります。雇用契約を結ぶ副業では、本業と副業の労働時間について、労働基準法上、一定の場合に通算して管理するルールがあります。また、長時間労働による健康への影響にも注意が必要です。前出のパーソル総合研究所の2025年の調査では、本業の残業時間と副業時間の合計が月45時間以上となる人が34.1%にのぼりました。そのうちの半数以上は、副業をしていることを本業先に申告していませんでした。

また、みらいワークスの調査にあったように、副業を一切認めていない大企業も今なお4分の1ほど存在します。副業が働き方のひとつとして根づくには、働く人が無理なくつづけられる環境づくりと、企業側が副業を認める体制づくりの両方が欠かせませんが、どちらもまだ十分とはいえません。

副業はすべての会社員が当たり前のように行うものにはならないでしょう。それでも、本業だけに頼らず、収入やキャリアの選択肢を自ら増やしていく手段として、副業は会社員にとってさらに身近な存在になっていくと考えられます。月5万円という金額は、その一歩として多くの人が思い描く目安なのかもしれません。