パートやアルバイトを探すとき、まず時給に目が行く人は多いかもしれない。求人を見て、以前より時給が上がったと感じる人もいるようだ。ただ、その時給が最低賃金とどのくらい離れているのか、意識しているだろうか。最低賃金は2024年に51円、2025年に66円、2026年に56円と、毎年50円を超える引き上げが続いている。
帝国データバンクが全国の企業に実施した調査では、企業が従業員を採用する際の最低時給は平均1,255円となり、前年から50円上昇した。一方で、最低賃金との差は縮まっている。時給で働いている人やこれから仕事を探す人にとっては、自分の時給の水準を考える手がかりになりそうだ。
採用時の最低時給は平均1,255円、最低賃金との差は78円
正社員、非正社員を問わず、企業が従業員を採用する際の最も低い時給(以下、最低時給)は、平均1,255円となり、前年から50円上昇した。厚生労働省が発表した2026年度の最低賃金の全国加重平均1,177円を78円上回った。全国加重平均は、都道府県ごとに決まる最低賃金を、働く人の数に応じて平均した額だ。
採用時の最低時給と最低賃金の差額をみると、2024年の112円から2025年は84円、2026年は78円へと2年連続で縮小した。最低時給そのものは上昇しているものの、最低賃金との差は縮まっている。求人の時給が上がっていても、最低賃金を上回る幅は以前ほど大きくないのかもしれない。
業界別の最低時給は『不動産』が1,318円で最も高い
業界別にみると、『不動産』が1,318円で最も高く、次いで『サービス』が1,296円、『建設』が1,293円と続いた。一方で、『農・林・水産』は1,155円、『小売』は1,172円、『製造』は1,203円となり、全体平均を下回った。
さらに、51業種別でみると、「情報サービス」が1,443円で最も高かった。同業種からは、「AIを使いこなせる人は効率よく働けるため、単価を上げることは可能だが、採用する人材の水準も上がり、必然的に少数精鋭の体制となる」との声が聞かれた。同じ採用時の時給でも、業界によって水準はだいぶ違うようだ。
都道府県別の最低時給、東京都1,410円と鳥取県1,107円で303円の差
都道府県別に最低時給をみると、「東京都」が1,410円で最も高く、次いで「神奈川県」が1,381円、「埼玉県」が1,322円、「大阪府」が1,318円となった。一方で、最も低かったのは「鳥取県」の1,107円で、「秋田県」が1,119円、「鹿児島県」が1,123円と続いた。最も高い「東京都」と最も低い「鳥取県」では303円の差があった。
各都道府県の最低時給と最低賃金の差額をみると、「東京都」が130円で最も大きく、次いで「埼玉県」が126円、「福井県」が121円となった。他方、「鳥取県」は17円にとどまり、「秋田県」が29円、「徳島県」と「鹿児島県」がそれぞれ33円だった。住んでいる地域によって、求人の時給の水準も、最低賃金との差も大きく違うといえそうだ。
企業が支払えると考える最低時給の上限は平均1,275円
企業に、事業を継続しながら支払うことが可能な最低時給の上限を尋ねたところ、平均は1,275円となり、採用時の最低時給1,255円を20円上回った。
上限額を『1,200円台以下』(「1,100円未満」「1,100円台」「1,200円台」の合計)とした企業は52.8%と半数を超えた一方、「1,500円以上」は14.4%にとどまった。政府は、遅くとも2030年代前半までのできる限り早期に、最低賃金の全国平均1,500円の達成を掲げている。
最低賃金の引き上げペース、「速すぎる」が42.3%で最多
近年の最低賃金の引き上げペースについて尋ねたところ、「速すぎる」が42.3%で最も多く、「妥当である」は34.4%、「遅すぎる」は6.2%、「分からない」は17.1%だった。
業界別にみると、「速すぎる」では、『小売』で58.9%と最も高く、次いで『農・林・水産』が56.9%、『運輸・倉庫』が51.5%、『製造』が50.4%となり、4業界で半数を超えた。一方で、『建設』では「妥当である」が43.0%となり、「速すぎる」の29.3%を13.7ポイント上回った。同じ引き上げでも、業界によって受け止め方は分かれているようだ。
自分の時給と地域の最低賃金を見比べてみる
採用時の最低時給は平均1,255円と前年から上がった一方、最低賃金との差は78円まで縮まり、業界や地域による開きも大きかった。パートやアルバイトで働いている人や、これから仕事を探す人は、住んでいる地域の最低賃金と自分の時給、気になる求人の時給がどのくらい違うのかを一度見比べてみると、働き方を考えるきっかけになりそうだ。
【調査概要】 調査期間:2026年9月14日~9月30日(インターネット調査) 調査対象:全国2万2,095社、有効回答企業数は1万235社(回答率46.3%) 調査主体:帝国データバンク

