「アルバイトも時給1,500円の時代」という言葉を耳にする機会が増えた。最低賃金の引き上げや人手不足などを背景に、平均時給はたしかに上がっている。ただ、アルバイトの時給は職種やエリアによって差があり、働き手の事情もさまざまだ。

この記事では、学生、主婦、シニアそれぞれの立場や時給が上がる背景を追いながら、「働けば稼げる時代」が本当に来ているのかを検証する。

アルバイトは「高時給化」している?

現在のアルバイト時給は、どの程度の水準にあるのか。マイナビが発表した「2026年6月度 アルバイト・パート平均時給レポート」(※1)によると、2026年6月の全国の平均時給は1,296円だった。前月と比べると5円下がっているものの、前年同月比では1円上がっており、高水準を維持している。

2026年1~6月の平均時給は1,300円で、2022年の年間平均1,147円と比べて153円高くなっている。 ただし平均で見た場合、「時給1,500円」にはまだ届いていないのが実情だ。

(※1)アルバイト・パート求人情報サイト「マイナビバイト」掲載の求人広告データを集計

職種によって、時給の伸びも水準も異なる

同レポートにおいて平均時給を職種(大分類)別に見てみると、その水準や上昇の度合いは職種によってさまざまである。

インバウンド需要の影響を受けやすい「販売・接客・サービス」は1,249円(前月比8円増、前年同月比67円増)で、過去最高額を更新した。レポートによれば、訪日外国人観光客の増加で人材需要が高まっており、それが時給上昇につながっている可能性があるという。

また、「警備・清掃・ビル管理」も1,225円(前月比17円増、前年同月比47円増)と過去最高を記録した。こちらは慢性的な人手不足に加え、夏場のイベント需要に向けた人材確保が背景にあるとみられている。

「飲食・フード」も1,207円(前月比1円減、前年同月比33円増)と、前年から上昇している。これらの職種は、時給の水準自体は全国平均を下回るものの、人手が必要とされる職種であり、時給が伸びやすいことがうかがえる。

一方、もともと時給水準の高い職種もある。「エンジニア・サポート・保守」は1,553円(前月比8円増、前年同月比315円増)、「イベント・キャンペーン」は1,461円(前月比11円増、前年同月比108円増)でいずれも平均時給を大きく上回り、前年からの伸び率も大きかった。

ちなみに、「営業」は1,396円で前年同月比では351円減、「配送・引越・ドライバー」は1,218円で前年同月比では104円減など、前の年から大きく時給を下げる職種もみられた。

エリアによる差もある

時給の差は職種だけではなく、エリアによっても大きい。同レポートによると、「関東」の平均時給は1,363円と、エリア別で唯一1,300円台に達した。一方、「北海道・東北」は1,192円、「九州・沖縄」は1,193円で、いずれも全国平均を100円以上下回っている。これらのエリアでは、最低賃金も全国で低い傾向にある。 マイナビの「最低賃金に関する調査レポート(2025年)」によると、アルバイトで働く人のうち17.9%が、時給の高い近隣地域への「越境バイト」を経験しているという。

このように、アルバイトの時給は職種やエリアによって大きく異なる。「時給1,500円」は一部で現実になりつつあるものの、多くのアルバイト就業者にとってはまだ遠い数字といえるだろう。

時給上昇の主な要因は「最低賃金」と「人手不足」

職種やエリアで差はあるとはいえ、アルバイトの時給自体は上昇している。それには大きくふたつの要因があり、そのうちのひとつが「最低賃金の引き上げ」だ。政府は、2026年7月に閣議決定した「日本成長戦略」において、2020年代に最低賃金の全国平均1,500円という高い目標の達成に向けて官民で努力を継続し、遅くとも2030年代前半のできる限り早期に全国平均1,500円を達成するとしている。

最低賃金が引き上げられれば、最低賃金の水準近くで働く人の時給は底上げされ、全体の平均時給を押し上げる要因にもなる。ただし、時給が上がる理由は最低賃金の上昇だけではない。実際の求人では最低賃金を上回る時給も多く、その背景にはもうひとつの要因である「人手不足」があると考えられる。

企業はなぜ賃上げするのか

実際に、企業はどのような理由で時給を上げているのか。マイナビの「非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査(2026年)」によると、直近半年間(2025年12月〜2026年5月)にアルバイトの給与を上げた企業は61.7%にのぼり、前年から1.6ポイント増えた。

賃上げの理由としてもっとも多かったのは「最低賃金の改定のため」で48.4%、ついで「人材確保が難しくなったため」が38.4%だった。先に挙げたふたつの要因、つまり最低賃金の引き上げと人手不足が、企業の回答からもそのまま裏づけられる。

なかでも、人手不足は深刻だ。マイナビの「非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2026年5-6月)」では、アルバイトが「不足」と答えた企業は35.6%で、「過剰」の10.7%を24.9ポイント上回った。とりわけ「飲食・宿泊」は不足感が53.5%と業種別でもっとも高い。人材の確保がむずかしくなるなか、時給の引き上げを迫られている企業は少なくないとみられる。

コンビニや飲食店も高時給化?

ただ、身近なアルバイト先であるコンビニや飲食店の時給をあらためて見てみると、状況は少しちがう。コンビニなどが含まれる「販売・接客・サービス」は1,249円、飲食店などが含まれる「飲食・フード」は1,207円で、いずれも全国平均の1,296円を下回っていた。ただし、これらはそれぞれの大分類全体の平均であり、コンビニや個々の飲食店の時給水準を直接示すものではない。

実際には、平均を上回るケースもある。そのひとつが、深夜帯の割増だ。労働基準法では、午後10時から午前5時までの労働に対して、通常の2割5分以上の割増賃金を支払うことが定められている(労働基準法第37条)。たとえば昼間の時給が1,200円であれば、深夜帯はその1.25倍にあたる1,500円になる計算だ。

コンビニや飲食店では、深夜割増によって夜間の時給が日中より高くなるケースがある。 働くエリアによっても差がある。先述のとおり関東の平均時給は1,300円台に達しており、都市部では同じ職種でも時給が高めになりやすい。コンビニや飲食店も、都市部の店舗であれば平均より高い時給で募集されることは十分ありうる。

つまり、コンビニや飲食店の時給は、平均で見れば高いとはいえないものの、深夜帯のように条件によっては高くなることもある。「コンビニも飲食店も高時給化」と一律にいえるわけではなく、いつ・どこで働くかによって差があるのが実情だろう。

時給が上がっても、事情は立場ごとにちがう

ここまではアルバイト市場の側に目を向けてきたが、時給が上がっても、それをどう活かせるかは働き手の立場によって大きく変わる。ここからは、アルバイトの担い手として代表的な学生、主婦、シニアの3つの層について、それぞれの事情を見ていきたい。

学生: 年収の壁が働く時間を制限する

タウンワークマガジン(調査企画:Indeed)が2026年3月に実施した「大学生アルバイト調査」によると、大学生アルバイトの平均時給は三大都市圏で1,200〜1,300円未満がもっとも多かった。調査方法は異なるものの、この価格帯は前出の全国平均1,296円(2026年6月)に近い水準である。

また、平均月収は大学1〜2年生では5万円台が、大学3〜4年生では8万円台が最多となった。同調査では、高学年の場合は卒業旅行や新生活を見据え、バイト代を稼ぐ必要があると分析されている。

しかしそれ以上に、厳しい経済状況が大学生の働く理由となっている。マイナビの「大学生のアルバイト調査(2025年)」によると、アルバイトをしている大学生で「経済的なゆとりがない」と答えた割合は54.8%で、調査開始以来最高となった。アルバイトをする目的も、「お金のため」に関する項目が上位を占める。

一方、制度改正前には、「年収の壁」を意識して働く時間を調整していた学生もいた。同調査では、2025年2月の調査時点で、アルバイトをする大学生の54.6%が、年収の壁を理由に就業調整をしていた。

このように、アルバイトの平均時給自体は上がる傾向にある一方、調査時点では年収の壁を意識して働く時間を調整している学生も一定数いたことがわかる。

主婦: 手取りが減らないように意識して働く

では、アルバイト主婦はどうか。ビースタイル メディアが運営する主婦・主夫向け求人サイト「しゅふJOB」によると、掲載求人の時給データから算出したパート・アルバイトの平均時給(全国・全職種・2026年7月分)は1,252円だった。前年同月比では45円増となり、時給自体は上昇傾向にある。しかし、アルバイトをする主婦も学生と同じ壁に直面している。

マイナビの「主婦のアルバイト調査(2026年)」では、アルバイト就業中の主婦の23.3%が「手取り額が減らないように就業調整をしている」と答えた。また、就業調整をして働く主婦の約半数が「手取り額が減らないのであれば働く時間を増やしたい」と答えている。もっと働きたい気持ちはあるのに、手取りを減らさないよう就業時間を抑えているのだ。

同調査では、就業調整をしている主婦アルバイトが職場からは「もっと働いてほしい」、配偶者などからは「収入を抑えてほしい」と、相反する声の板挟みになっている状況もうかがえる。時給が上がっても、その恩恵をそのまま受け取れるとは限らないのだ。

シニア: 収入以外に働く意味を見いだす人も

シニアについてもアルバイト時給の水準を確認したいが、シニアに限定した時給データは見当たらない。そこで、厚生労働省の「令和7(2025)年 賃金構造基本統計調査の概況」から、年齢階級別の短時間労働者全体の数字を参考にする。これによると、1時間当たり賃金は60〜64歳では1,526円、65〜69歳では1,569円で、短時間労働者全体の平均1,518円と大きくは変わらない。

純粋なアルバイト時給のデータではないため断定はできないものの、時給の面では、シニアがとくに不利というわけではなさそうだ。なお、この統計はパート・アルバイトに限らない短時間労働者を対象としており、前出の求人広告データに基づく平均時給とは母集団・算出方法が異なるため、数値を直接比較することはできない。

一方、シニアの場合は学生や主婦とは事情が異なり、収入以外に働く理由を見いだす人もいる。マイナビが60歳以上を対象に調査した「シニアのアルバイトに関するライフエンゲージメント調査(2026年)」によると、働かなくてもいい状況でも働きたいシニアがアルバイトをする目的は、「自分の生活費のため」といった収入面を抑え、男女ともに「健康維持のため」(男性45.7%、女性48.8%)がもっとも多かった。

もちろん、収入のために働くシニアは多く、時給が上がることで生活の助けになる人もいるだろう。ただ、それとは別の理由からアルバイトに向き合うシニアも、一定数いると考えられる。

「働けば稼げる時代」は来たのか

アルバイトの時給は、最低賃金の引き上げや人手不足を背景に、全体としては上昇している。ただし、職種やエリアごとに見てみると、その時給には差が生じている。働き手側に目を向けると、学生や主婦は「年収の壁」を意識して働く時間を抑える人も多く、時給が上がっても、それがそのまま収入増につながるとは限らない。

「時給1,500円時代」という言葉が示すほど、現状では誰もが稼げるようになったわけではない。政府が最低賃金の引き上げを目標に掲げるなか、アルバイトの時給が今後どのように推移するかも注目される。ただ、それがそのまま「働けば稼げる」につながるかは、働き手の立場によって、また職種や働くエリア・時間帯などによって、なお大きく異なるとみられる。

■参考

2026年6月度 アルバイト・パート平均時給レポート

厚生労働省:令和7年度地域別最低賃金の全国一覧

内閣官房:日本成長戦略(令和8年7月21日閣議決定)

マイナビ最低賃金に関する調査レポート

マイナビ非正規雇用の給与・待遇に関する企業調査(2026年)

マイナビ非正規雇用に関する企業の採用状況調査(2026年5-6月)

アルバイトで18時から23時まで働いています。深夜は割増になるということを聞きました。どういう事でしょうか。

大学生のバイト代の平均月収、平均時給、平均シフトはどのくらい?<2026年版>

大学生のアルバイト調査(2025年)

【2026年7月しゅふ求人の平均時給】パート・アルバイト:『1,252円』、派遣:『1,503円』

主婦のアルバイト調査(2026年)

厚生労働省 令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況(PDFがダウンロードされます)

ミドルシニア/シニア層のアルバイト調査(2026年)