政府が推奨している長期・分散投資。その中でもとくに投資初心者が選択しやすいと言われているのがインデックス投信です。

なかでも、積立投資で人気なのが、「オルカン」とS&P500に連動する投資信託です。どちらも新NISAのつみたて投資枠で選ばれていますが、「結局、どちらを選べばいいの?」と悩む人も多いでしょう。

そこで今回は、毎月3万円を10年間積み立てた場合、資産額にどれくらいの差が生まれたのか、過去10年間の指数データをもとにシミュレーションしました。

それぞれの特徴や運用実績を比較しながら、長期の資産形成ではどのような視点が大切なのかをFPが解説します。

新NISAで積立投資を始める際、「オルカン」と「S&P500」は比較されることの多い選択肢です。しかし、投資先の地域や構成銘柄には違いがあり、過去の値動きにも差が出ています。

まずはそれぞれがどのような指数に連動し、どこに投資しているのか、基本的な違いから見ていきましょう。

オルカンとS&P500は何が違う?

最初に、「オルカン」と「S&P500」の違いを確認しておきましょう。

一般に「オルカン」と呼ばれているのは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」という投資信託です。「MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス)」への連動を目指すインデックスファンドで、先進国から新興国まで世界47カ国・地域の株式に幅広く投資できます。

一方、「S&P500」は米国を代表する大型株約500銘柄で構成される株価指数で、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしています。S&P500に投資する場合は、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」など、S&P500への連動を目指すインデックスファンドを購入するのが一般的です。

「オルカン」と「S&P500」の違いを簡単にまとめると次のようになります。

オルカン
S&P500
連動対象
(ベンチマーク)
MSCI ACWI
S&P500指数
投資対象
全世界
(世界各国の約2,500銘柄)
米国
(米国を代表する約500銘柄)
主な国・地域
米国、日本、欧州、新興国など
米国
特徴
世界経済全体の成長を取り込む
米国企業の成長を取り込む

筆者作成

ここで押さえておきたいのは、オルカンは全世界に分散投資しているものの、その63.1%(2026年7月末時点)を米国が占めていることです。つまり、オルカンだけでも投資先の6割以上が米国株ということになります。

そのため、両者の大きな違いは、「米国に集中して投資するか、米国を中心としながら日本や欧州、新興国などにも分散して投資するか」と考えるとわかりやすいでしょう。

オルカンとS&P500、月3万円を10年間積み立てたら差はいくらになる?

では、実際の過去10年間の指数の推移をもとに、毎月3万円ずつ積み立てた場合、オルカンとS&P500でどのくらいの差が生まれたのかを試算してみます。

期間は2016年8月から2026年7月までの10年間です。オルカンはMSCI ACWIの「円ベース・グロスリターン」、S&P500は「S&P 500 YEN(トータルリターン)」の指数値を使用しました。どちらも配当を含む円ベースの指数で比較しています。

毎月末に3万円分を購入したと仮定し、その月の指数値から購入口数を計算。120回分の口数を合計して、2026年7月末の指数値で評価しています。

結果は次のようになりました。

毎月3万円を10年間積立

オルカン(ACWI)
S&P500
投資元本
360万円
360万円
2026年7月末の評価額
約988万円
約1,100万円
運用益
約628万円
約740万円
元本に対する倍率
約2.7倍
約3.1倍
差
約112万円

筆者試算
※2016年8月~2026年7月の月次指数値を用いたシミュレーションであり、手数料等は考慮していません。実際の投資信託の運用成績を示すものではありません。

過去10年間については、S&P500に投資していたほうが、評価額が約112万円高くなったことになります。

出所:MSCI「Index Data Search」(MSCI ACWI/Gross Return/JPY)、S&P Dow Jones Indices「Index Finder」(S&P 500/Total Return/JPY)より筆者作成

S&P500が毎年オルカンを上回ったわけではない

最終結果だけを見ると、S&P500が大きく上回っているように見えますが、この10年間、株価が一直線に上昇してきたわけではありません。

ACWIとS&P500の各年の騰落率を見てみます。

ACWI、S&P500年間騰落率

年
MSCI ACWI
円ベース・配当込み
S&P500
円ベース・配当込み
S&P500-ACWI
2016年
+5.18%
※算出不可
―
2017年
+20.37%
+17.67%
▲2.70pt
2018年
▲11.30%
▲6.88%
+4.42pt
2019年
+26.09%
+30.24%
+4.15pt
2020年
+10.99%
+12.48%
+1.49pt
2021年
+32.77%
+43.55%
+10.78pt
2022年
▲6.00%
▲6.17%
▲0.17pt
2023年
+31.22%
+34.94%
+3.72pt
2024年
+31.56%
+39.37%
+7.81pt
2025年
+22.55%
+17.57%
▲4.98pt

出所:MSCI「MSCI ACWI Index (JPY)」、S&P Dow Jones Indices「S&P 500 YEN (TR)」のデータをもとに筆者作成
※S&P500の2016年については、今回使用した公式データファイルに2015年末の指数値が収録されていないため、表では算出していません。

2017~2025年の年間騰落率を見ると、オルカン、S&P500ともに、マイナスだったのは2018年と2022年の2回だけです。

2018年には世界的な株安、2020年にはコロナショックによる急落、2022年にはインフレや急速な金融引き締めを背景とした株安がありました。もっとも、2020年はその後相場が回復し、年間では両指数ともプラスとなっています。

一方で、2021年、2023年、2024年には、オルカンとS&P500ともに30%を超える上昇を記録しています。

このように、年間リターンには大きなばらつきがあることがわかります。

また、オルカンとS&P500の騰落率を比べてみると、オルカンがS&P500に勝った年は2017年、2022年、2025年と3回あります。毎年S&P500が勝っていたわけではないことが確認できます。ただ、S&P500が上回った年は差が大きいケースがあり、2021年は約10.8ポイント、2024年は約7.8ポイントの差がありました。好調な年の上昇幅はS&P500のほうが大きかったことが、最終的にオルカン約988万円に対してS&P500約1,100万円と、約112万円の差につながったといえるでしょう。

なぜS&P500はオルカンより強かった?

S&P500がオルカンを上回るリターンをあげた主な理由は、過去10年間、米国株が世界の株式市場をけん引してきたことです。とりわけ大型テクノロジー企業の株価が大きく上昇したことは、S&P500の好成績につながった要因の一つと考えられるでしょう。

オルカンにもこうした米国企業は含まれますが、日本や欧州、新興国などにも幅広く投資しています。過去10年間は米国株が相対的に好調だったため、結果としてS&P500のリターンがオルカンを上回りました。

新NISAではオルカンよりS&P500を買ったほうがいい?

今回の結果を見ると、「オルカンよりS&P500を買ったほうがいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、S&P500のリターンがオルカンを上回ったのは、あくまで過去10年間の結果です。過去の実績だけで将来のリターンを判断することはできません。

今後、米国株が低迷する一方で、新興国など米国以外の株式市場が大きく成長すれば、世界中の株式に分散投資するオルカンのほうが有利になる可能性もあります。

オルカンのメリットは、「これからどの国が成長するか」を自分で予想する必要がないことです。現在は米国の比率が高くても、将来ほかの国の株式市場が大きくなれば、指数の構成比も変化していきます。その点が明確に米国企業の成長に期待するS&P500との大きな違いです。

「今後も米国企業が世界経済をけん引していく」と考えるならS&P500、「将来どの国が成長するかわからないので、世界全体に幅広く投資したい」と考えるならオルカン、という選び方がわかりやすいでしょう。

それぞれの特徴を理解したうえで、自分の投資方針に合ったものを選ぶことが大切です。

「112万円の差」より大事なこと

オルカンとS&P500を過去10年間のデータで比較すると、最終的な評価額には約112万円の差が生まれました。しかし、資産運用を考えるうえでは、この差以上に注目したいことがあります。

それは、どちらを選んだ場合でも、元本360万円が2倍以上に増えたことです。もちろん、過去10年間の好成績が今後も続く保証はありません。特に、この期間は米国株の大幅な上昇や円安という追い風がありました。

今後の相場がどうなるかは誰にもわかりません。だからこそ、どの商品が最も値上がりするかを予想することよりも、自分が許容できるリスクに合った投資先を選び、長期間にわたって積み立てを続けることが重要になります。

長く投資を続けていれば、相場が大きく下落することもあるでしょう。しかし、積立投資では、価格が下がったときには同じ3万円でもより多くの口数を購入できます。その後、相場が回復すれば、安い時期に購入した分が資産の増加に貢献します。

つまり、積立投資では値下がり局面も、必ずしも悪いことばかりではありません。大切なのは、「一番儲かりそうな商品」を選ぶことではなく、自分が長く持ち続けられる商品を選ぶことです。

オルカンとS&P500のどちらを選ぶにしても、短期的な値動きに一喜一憂せず、淡々と積み立てを続けることが、長期の資産形成では重要になるでしょう。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を勧誘・推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。過去の実績は将来の運用成果を保証するものではありません。

■参考

MSCI ACWI(全世界株式)とは? 指数の特徴や構成国・地域をわかりやすく解説|投資信託なら三菱UFJアセットマネジメント

MSCI オール・カントリー・ワールド指数 (ACWI) – MSCI

S&P500指数(米国株式)とは?指数の特徴や業種別構成をわかりやすく解説|投資信託なら三菱UFJアセットマネジメント

End of day index data search – MSCI

S&P 500 JPY (TTM) | S&P Dow Jones Indices

MSCI World Index (JPY)

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | eMAXIS(イーマクシス)

eMAXISSlim全世界株式(オール・カントリー)月次レポート2026年07月31日現在

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | eMAXIS(イーマクシス)