遺族年金といえば、一家の大黒柱が亡くなったときに受け取れるイメージが強いですが、共働きでも条件を満たせば受け取ることができます。ただし、現行制度では夫が亡くなった場合と妻が亡くなった場合では、受給条件が異なります。

今回は、世帯年収800万円の共働き夫婦をモデルに、遺族年金をいくら受け取れるのか試算してみました。また、2028年4月から予定されている遺族厚生年金の改正についても解説します。

遺族年金はどんな人がいくら受け取れる?

遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入していた人などが亡くなったときに、残された家族の生活を支えるために支給される公的年金です。

国民年金から支給される「遺族基礎年金」と厚生年金から支給される「遺族厚生年金」の2種類があります。

いずれも、遺族年金を受け取れるのは、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族が対象です。「生計を維持されていた」とは、亡くなった人と遺族が生計同一で、かつ遺族の年収が850万円未満であることです。そのため、共働きであっても、条件に該当すれば遺族年金を受け取ることができます。

遺族基礎年金
遺族基礎年金は、原則として18歳になった年度の末日までの子ども(または、一定の障害がある20歳未満の子ども)がいる配偶者、もしくは対象となる子ども自身が受け取れます。対象となる子どもがいない場合、配偶者は受け取れません。

<年金額>
年金額は保険料納付済期間にかかわらず定額です。2026年4月からの年金額は84万7,300円(※)です。これに、子の数に応じた加算があります。1人目と2人目はそれぞれ24万3,800円、3人目以降は8万1,300円が加算されます。

※昭和31年4月2日以後生まれの人の年金額

遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた人が亡くなった場合に、一定の要件を満たす遺族が受け取れます。

遺族は順位の高い者から、(1)子のある配偶者、(2)子、(3)子のない配偶者、(4)父母、(5)孫、(6)祖父母となっており、原則としてもっとも順位の高い者が受給します。

遺族の要件は、配偶者の性別や年齢、子どもの有無によって異なります。2028年4月から、性別による受給条件の違いを解消するため、遺族厚生年金の見直しが予定されていますが、ここでは現行制度を解説します。

遺族が妻の場合
・夫死亡時に子どものいない30歳未満の妻は5年間の有期給付
・夫死亡時に30歳以上の妻は生涯受給できる

遺族が夫の場合
・妻死亡時に夫は55歳以上であること(支給は60歳から※)
・妻死亡時に55歳未満の夫は受給できない

※遺族基礎年金の受給権がある場合を除く

<年金額>
原則として、亡くなった人の厚生年金の加入期間に基づく報酬比例部分の額の4分の3です。ただし、厚生年金加入中に亡くなった場合など、一定の受給要件に該当するときは、加入月数が300月(25年)に満たなくても、300月とみなして計算します。

遺族厚生年金の計算式

平均標準報酬額×(5.481/1000)×加入月数×3/4

※2003年4月以後の計算式

実際にいくら受け取れるのかは、次のモデルケースでシミュレーションしてみましょう。

世帯年収800万円の共働き夫婦で試算

世帯年収800万円の共働き世帯で、子どもがいるケースといないケースに分けて試算してみます。

子どもがいるケース

夫:35歳・会社員・年収400万円
妻:35歳・会社員・年収400万円
世帯年収:800万円
子ども:3歳と1歳の2人
年金加入歴:夫婦ともに20歳から厚生年金に加入

計算を簡単にするため、平均標準報酬額は年収を12で割った金額とし、過去の収入も現在と同水準と仮定します。試算は2026年度の現行制度に基づきます。

夫が亡くなった場合の遺族年金

妻は35歳であり、年収400万円であるため遺族厚生年金を受け取ることができます。

年収400万円の夫の平均標準報酬額は33万3,333円、加入期間は300月(25年)未満であるため300月として計算します。

33万3,333円×(5.481/1000)×300月×3/4=41万1,075円

遺族厚生年金は年額約41万1,000円となります。

さらに子どもがいるため、妻は遺族基礎年金も受給できます。2026年度の遺族基礎年金は年額84万7,300円で、子ども2人の場合はそれぞれ24万3,800円が加算されます。合計で133万4,900円となります。

妻が受け取れる遺族年金(筆者試算)
遺族厚生年金 遺族基礎年金 遺族年金合計 月額換算
約41万1,000円 133万4,900円 約174万5,900円 約14万5,500円

遺族厚生年金と遺族基礎年金を合わせて、約174万5,900円の遺族年金を受け取ることができます。

ただし、遺族基礎年金は、上の子が18歳になった年度末を迎えると約24万円減り、下の子が同じように対象年齢を超えると遺族基礎年金そのものが終了します。

なお、現行制度では、一定の条件を満たす妻に「中高齢寡婦加算」が支給されます。2026年度は年額63万5,500円です。

今回のケースでは、妻が40歳になった時点でも遺族基礎年金の対象となる子どもがいるため、その後、子どもの成長によって遺族基礎年金を受け取れなくなった場合には、原則65歳まで加算の対象となります。ただし、中高齢寡婦加算についても2028年から段階的な見直しが予定されているため、実際に加算を受ける時点では、改正後の制度が適用される可能性があります。

妻が亡くなった場合の遺族年金

夫は35歳であるため、現行制度では遺族厚生年金を受け取ることができません。ただし、子どもがいるため、遺族基礎年金は受給できます。

また、見落としたくないのが、子ども自身も遺族厚生年金の受給対象となることです。

今回のケースでは、夫が遺族基礎年金133万4,900円を受け取り、子ども2人には合計約41万1,000円の遺族厚生年金が支給されます。

そのため、世帯全体で受け取る遺族年金は年額約174万5,900円となり、妻が残された場合と同額です。

世帯全体で受け取れる遺族年金(筆者試算)
遺族厚生年金 遺族基礎年金 遺族年金合計 月額換算
約41万1,000円 133万4,900円 約174万5,900円 約14万5,500円

ただし、子どもが対象年齢を超えると、子どもに支給されていた遺族厚生年金は終了します。一方、夫自身には遺族厚生年金の受給権がないため、その後は遺族厚生年金を受け取れません。

子どもがいないケース

夫:35歳・会社員・年収400万円
妻:35歳・会社員・年収400万円
世帯年収:800万円
年金加入歴:夫婦ともに20歳から厚生年金に加入

夫が亡くなった場合の遺族年金

妻は35歳であり、年収400万円であるため遺族厚生年金を受け取ることができます。しかし、子どもがいないため、遺族基礎年金は受け取れません。

妻が受け取れる遺族年金(筆者試算)
遺族厚生年金 遺族基礎年金 遺族年金合計 月額換算
約41万1,000円 0円 約41万1,000円 約3万4,250円

遺族厚生年金のみを年額約41万1,000円受け取ることができます。

妻が亡くなった場合の遺族年金

夫は55歳未満であるため、遺族厚生年金は受給できず、子どももいないため、遺族基礎年金も受給できません。

夫が受け取れる遺族年金(筆者試算)
遺族厚生年金 遺族基礎年金 遺族年金合計
0円 0円 0円

夫が残された場合は遺族厚生年金が受け取れないため、妻が残されたケースよりも約41万円少なくなります。

このように、同じ年収の共働き夫婦であっても、夫と妻のどちらが亡くなるかによって、残された配偶者が受け取れる遺族年金に差が生じるのが現行制度です。しかし、共働きが一般的になった今、こうした男女による受給条件の違いは、時代に合わなくなってきています。

そこで、2025年に成立した年金制度改正法では、こうした男女による受給条件の違いを解消する見直しが行われました。2028年4月から施行予定です。

2028年から遺族厚生年金はどう変わる?

今回の改正では、18歳年度末までの子どもを養育していない60歳未満の配偶者について、男女とも原則5年間の有期給付に見直されます。

  • 出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

    出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

女性については20年かけて段階的に実施され、2028年度末時点で40歳以上となる女性は今回の見直しによる影響を受けません。

また、5年間の有期給付では、新たな加算が上乗せされ、遺族厚生年金の受給額が従来の約1.3倍になります。5年経過後も、障害がある場合や収入が十分でない場合には、継続して受け取れる配慮措置があります。

さらに、有期給付については年収850万円未満という収入要件も撤廃されます。これにより、これまで年収850万円以上あるために遺族厚生年金を受け取れなかった人も、要件を満たせば原則5年間の有期給付を受けられるようになります。

一方、18歳年度末までの子どもを養育している間は、基本的に現行制度の給付内容が維持されます。子どもが対象年齢を超えた後は、改正後の有期給付の対象となる場合、さらに5年間、増額された遺族厚生年金を受け取れます。

なお、60歳以上で死別された場合は、現行制度のまま、無期限の給付となります。

まとめ

遺族年金は、残された家族の生活を支えるための大切な制度です。これまでの制度は、夫が働き、妻が家庭を守るという専業主婦世帯を前提とした仕組みが色濃く残っており、男女で受給要件に大きな違いがありました。

しかし、共働き世帯が専業主婦世帯を大きく上回るようになり、家族のあり方や働き方も変化しています。こうした時代の変化に合わせて、今回の制度改正が行われることになりました。

改正後は、これまで原則として受給できなかった子どものいない60歳未満の男性も、遺族厚生年金を受け取れるようになります。一方、女性についても、子どものいない60歳未満の人を対象に、段階的に5年間の有期給付へと見直されます。

男女間の差が解消される一方で、配偶者の収入に頼って生活していた人にとっては、5年間で給付が終了することへの不安もあるでしょう。ただし、5年経過後も収入が十分でない場合などには、給付を継続する仕組みが設けられています。

今回の改正をきっかけに、万が一のときに家族がどのような保障を受けられるのか、あらためて確認しておくといいでしょう。