シェイクスピアは『ハムレット』でこう書いている。「借り手にも貸し手にもなるな。貸し借りはしばしば金と友の両方を失わせる」と。しかし、私たちの暮らしはお金とは切り離せない。はたして、幸せなお金との付き合い方とはどのようなものだろうか――。この連載では、マネーの案内人があなたをお金との心地よい付き合い方へ誘います。第1回は、家計管理を提案してきたファイナンシャルプランナー(FP)の江尻尚平氏。家計を「見える化」することが、将来への安心につながる理由とは――。
家計を"見える化"すると、お金との付き合い方が変わる
そもそも家計管理はなぜ必要なのだろうか。江尻氏は会社に例えてこう説明をする。
「なぜお金が大事か」と問われれば、自分の望む人生を実現するための手段として、お金は必要だと答えるでしょう。そのために家計管理が重要になってきます。会社に例えると分かりやすいでしょう。家計管理はいわば会社の経理部。会社にはさまざまな部署がありますが、経理部がない会社は存在しませんよね。経理部は健全な財務基盤を保ち、経営の意思決定においても重要な役割を担っています。家計管理は、具体的に何にいくらかかっているかを知るために欠かせません。それにもかかわらず、多くの家庭では家計管理ができていないのです。私たちの調査(※1)でも、「お金に不安がある」と答えた人は7割にのぼる一方、家計管理を実行している人は半数にとどまっていました。
※1 スマートアイデア株式会社調べ(実施年2020年3月・回答者2422人)」

とはいえ、いざ家計管理を考えたとき、何から手をつければよいか戸惑うことも。江尻氏はそんな時、3ステップで考えることを提案する。
家計管理の手順は「つける」「貯める」「増やす」の順に考えます。最初の「つける」は家計を可視化し、何に使っているのか状況を把握すること。そのためには家計簿をつけることが大切です。家計簿に難しいイメージがあるのは、これまで都度書き写しや入力をし、整理や分類を自分で行う必要があったためです。しかし、テクノロジーの発展に伴い、現在ではスマートフォンの家計簿アプリが主流となり、作業の負担は大幅に軽減されているのです。費目ごとの分類や集計をアプリが自動で行い、グラフで可視化してくれます。クレジットカードや銀行などと連携すれば、各金融機関のデータもアプリ内に集約されます。自分で操作しなくても、スマートフォンを見るだけで家計を把握できる状態になっています。
では、お金の流れが可視化されるメリットとは何なのだろうか。江尻氏はこう続ける。
スマートフォンを見れば、今日、今週、今月、今年といった単位で支出額やその内訳を瞬時に把握できるようになります。家計を可視化することで、無駄な支出に気づきやすくなります。

お金との距離を縮めることが、将来への安心につながる
しかし、何事も新しいことを始めるには、抵抗感があるもの。まず、何から始めたらよいのだろうか。江尻氏は完璧を目指さないことをすすめる。
無理のない範囲で始めることが大切。最初からすべての金融機関と連携する必要はなく、メインで使う銀行1行だけでも十分です。金額も1円単位ではなく100円単位で入力するなど、おおまかな全体の流れを把握するとよいのではないでしょうか。

家族の有無などそれぞれのライフスタイルによってお金との付き合い方は変わるだろう。しかし、江尻氏はいずれもライフイベントを見据えることが重要だと提案する。
夫婦が共働きである世帯の場合、重要なのはお金の情報を共有することです。年収や資産、支出が不透明なままでは、協力して管理するのは難しくなります。独身の場合でも家計管理は不可欠です。長寿化が進み、老後資金の重要性が高まる中、収入が伸び続けるとは限りません。将来のライフイベントを見据えた資金管理が求められています。
家計を把握した「その先」に何があるのだろうか。
支出を可視化すると、いつ何に使ったのかが分かるようになります。そこで注目されるのが「ラテ・マネー(Latte Money)」です。日々の小さな出費が積み重なって、家計に影響を与えるという考え方です。アプリのデータを見て、「不要だったかもしれない支出」に気づけば、それを抑えることで自然とお金は貯まりやすくなります。「貯める」仕組みができたら、「増やす」段階へ進む選択肢があります。「つける」で支出を把握し、「貯める」で無駄を減らし、「増やす」へと進む。人生100年時代、自ら資産を守るための行動が求められています――。
※本記事は情報提供を⽬的としたものであり、特定の⾦融商品の勧誘・推奨を⽬的とするものではありません。
【プロフィール】
江尻 尚平(えじり・しょうへい)/スマートアイデア株式会社代表取締役
ファイナンシャルプランナー。上智大学理工学部卒業後、大手外資系携帯電話メーカーにてサービス企画などに従事。慶應義塾大学大学院経営管理研究科にて経営学修士(MBA)を取得。2012年にスマートアイデア株式会社を創業し、代表取締役に就任。500万ダウンロードを達成した家計簿アプリ「おカネレコ」、FPオンライン相談サービス「マネシル」等、Fintech分野に注力した事業を展開。テレビの経済情報番組に出演し、家計に関わるコメントも発信する。著書に『お金が貯まる!世帯年収500万円から始める共働き夫婦の超効率家計簿』(徳間書店)がある。
取材・文:西村智宏 写真:松田麻樹 編集:Pen編集部