勝負メシといえば、何を置いても「とんかつ」でしょう。その圧倒的な旨さと押し出しの強さ、そして「とん“勝つ”」という必勝祈願の語呂合わせ。商談前の“勝ち飯”に、これほどふさわしい食べものはないと思うのです。

僕は2012年から仲間たちと「東京とんかつ会議」を立ち上げ、月2回、都内のとんかつ店を食べ歩いていますが、今まさに東京は“とんかつ黄金期”。

以前に比べて味の良い銘柄豚が増え、肉質はもちろん、ラードの質や揚げの技術も向上。堂々たる一品料理として各店が切磋琢磨している状況です。

さて、第一回の勝ち飯ランチとして取り上げるのは、東京・大門の『とんかつ いわい』。元は『のもと家』という店名だったのを、2022年に店主の岩井三博さんが営業権を買い取り、ご自身の名を冠して再オープンを果たしたお店です。

大門の『とんかつ いわい』

数ある東京のとんかつ店の中から、なぜ今回『とんかつ いわい』を選んだのか。選定理由は以下の通り。

 1.店主のとんかつへの真摯な向き合い方

 2.六白黒豚の旨さを引き出す高度な技術

 3.とんかつを鹿児島醤油と茎わさびで楽しませる独自性

 4.「よっしゃ!」と気分をアゲてくれる店のライブ感

 5.浜松町や新橋、虎ノ門からも近いビジネス街であり、同時に増上寺の門前町としての歴史も併せ持つ大門エリアに店を構えている

『とんかつ いわい』がこだわるのは「六白黒豚」。鹿児島県などで生産される純粋黒豚の中でも希少な品種で、甘い香りときめ細やかな肉質を持つ、とんかつには最高・最適な銘柄豚。

店主の岩井さんは、かつて浅草にあった『豚珍館』というとんかつ屋で、この六白黒豚と偶然の出会いを果たしたとのこと。

「体調を崩して仕事を休んでいた時期に、知人に『豚珍館』で働いてみないか? と紹介されたんですね。正直、断るつもりで面接に行ったんですが、そこで出された六白黒豚の旨さに衝撃を受けて。これを自分で揚げたらどうなるだろう? と思って働くことに。まさに光に導かれるような感じでした。それからは、この豚に恩返しするつもりで、その旨さを最大限に引き出すために試行錯誤する毎日です」(岩井さん)

揚げ油は、独自にブレンドしたラード。厚切りロースの場合は120℃から始めて、160℃くらいまでラードの温度を微妙に調整しながら揚げていくとのこと。

岩井さんがすごいのは、お客さんの顔を見て、スマホで写真を撮影しそうな人、すぐに食べ始めそうな人などを瞬時に見分け、揚げ時間を調整していること。こうした、目に見えない部分の気遣いも素晴らしい。

六白黒豚の魅力を余すところなく楽しむには、ぜひ限定8食の「厚切りロースかつ定食」を食べていただきたい。

これぞ“勝ち飯”と呼びたくなる豪華な一品は、240gの極厚とんかつとキャベツ、六白黒豚の豚汁、ポテサラとゆず大根のお新香が付いてきます。

たまに「健康志向なのでヒレを選ぶ」なんて言う人がいますが、とんかつ定食ならロース一択でしょう。肉と脂身、2つの味を楽しめるし、何しろ“ご飯の喚起力”が段違いです。

僕は岩井氏のとんかつを浅草時代から食べ続けていますが、10年前と比べるとグンとレベルアップしているのがわかります。

揚げ方の進化による六白黒豚のおいしさは言うに及ばず、衣がより細かくなって歯ざわりと食感が増し、ラードの香りとキレもよく、そのことが衣自体のおいしさを引き立てています。