「一人っ子だと教育費にお金をかけられる」という声を聞くことがあります。
厚生労働省の最新調査では、18歳未満の児童がいる世帯のうち、「児童が1人いる世帯」の割合が50.1%と、調査開始以降初めて5割を超えました。ただし、この数字は「一人っ子」の割合を示すものではありません。
実際、一人っ子と子どもが複数いる家庭では、教育費にどのくらい差が生まれるのか、最新のデータをもとに比較してみます。
18歳未満の児童が1人の世帯は50.1%
厚生労働省の「2025年 国民生活基礎調査」によると、18歳未満の児童がいる世帯のうち、児童が1人いる世帯は50.1%を占めました。調査を開始した1986年以降、初めて5割を超えました。
1986年から2004年の調査までは、児童2人の世帯が最も高い割合を占めていました。しかし、2007年調査から、児童1人の世帯が児童2人の世帯を上回り、それ以降、児童1人の世帯が最も多い状態が続いています。
また、全世帯に占める「児童のいる世帯」の割合は16.7%で、過去2番目の低さとなっています。児童のいる世帯そのものが減る一方で、児童のいる世帯では、児童1人の世帯が半数を占めています。
子どもの数を考えるうえでは、仕事と子育ての両立や、子育て・教育にかかる経済的な負担など、さまざまな事情が影響すると考えられます。「子どもが1人なら、その分教育にお金をかけられる」と考える家庭もあるでしょう。
では実際に、一人っ子は兄弟姉妹がいる子どもと比べて、教育費が多くかけられているのでしょうか。文部科学省の「子供の学習費調査」をもとに、データから比較してみましょう。
一人っ子は教育費を多くかけてもらえる?
文部科学省の「子供の学習費調査」では、兄弟姉妹の数による学習費の違いを確認できます。
そこで、公立の小学校・中学校・高校に通う子どもについて、兄弟姉妹の数によって年間の学習費がどのくらい違うのか比較してみましょう。
なお、学校種による学習費水準の違いの影響を避けるため、ここでは公立に条件をそろえています。
小学校から高校まで、すべての学校段階で学習費総額は、
一人っ子 > 兄弟姉妹1人 > 兄弟姉妹2人 > 兄弟姉妹3人以上
の順となっています。
一人っ子と「兄弟姉妹3人以上」を比較すると、年間の学習費総額は、小学校で約1.45倍、中学校で約1.44倍、高校で約1.23倍です。
では、この差はどこから生まれているのでしょうか。学習費総額は、「学校教育費」「学校給食費」「学校外活動費」で構成されます。ここでは、このうち学校でかかる「学校教育費」と、塾や習い事などにかかる「学校外活動費」を見てみましょう。
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出所:文部科学省「2023年度 子供の学習費調査/8 兄弟姉妹の数及び調査対象者の出生順位別学習費」をもとに筆者作成
※「兄弟姉妹3人以上」は、調査対象者本人を含めると子どもが4人以上いる場合を指します。
学校でかかる「学校教育費」を見ると、兄弟姉妹の数が少ないほど高くなるという一貫した傾向はみられません。小学校では一人っ子が最も高いものの、中学校では「兄弟姉妹1人」、高校では「兄弟姉妹3人以上」が最も高くなっています。
一方、塾や習い事などの「学校外活動費」には、はっきりとした違いがみられます。小学校・中学校・高校のすべてで、
一人っ子 > 兄弟姉妹1人 > 兄弟姉妹2人 > 兄弟姉妹3人以上
の順となっています。
一人っ子と「兄弟姉妹3人以上」を比較すると、学校外活動費は小学校で約1.7倍、中学校で約1.7倍、高校では約2.7倍です。
この調査結果を見る限り、公立に通う子どもでは、一人っ子の年間学習費総額が小学校から高校まで一貫して最も高くなっています。そして、その差を大きくしているのが、塾や習い事などの「学校外活動費」です。
出生順位による差はある?
同調査では、出生順位による学習費の違いも調べています。こちらも見てみましょう。
出生順位別に見ても、小学校・中学校・高校のすべてで、学習費総額は
一人っ子 > 第一子 > 第二子 > 第三子以降
の順となっています。
「学校教育費」と「学校外活動費」も見てみましょう。
出生順位別でも「学校教育費」は、出生順位が後になるほど少なくなるといった一貫した傾向はみられません。
一方、「学校外活動費」では、小学校・中学校・高校のすべてで一人っ子が最も高く、第一子、第二子、第三子以降と出生順位が後になるほど少なくなっています。
つまり、出生順位別に見ても、学習費総額の差を大きくしているのは、学校教育費よりも、塾や習い事などにかかる「学校外活動費」であることがわかります。
一人っ子は塾や習い事への支出が多い?
文部科学省の「子供の学習費調査」から見えてきたのは、一人っ子は兄弟姉妹がいる子どもよりも、学習費総額が多くなっており、その中身を見ると、学校教育費よりも、塾や習い事などの学校外活動費で特に差が表れているということです。
つまり、一人っ子は、学校教育費に大きな違いがあるというよりも、塾や習い事など、家庭の判断で追加する教育により多くのお金が使われている傾向があるといえるでしょう。
ただし、この結果は、一人っ子であること自体が教育費を押し上げているという因果関係を示すものではありません。
子どもが多いほど教育費は増える? 多子世帯向けの支援も
ここまでの結果を見ると、「教育費を1人に集中できる一人っ子のほうが有利なのでは?」と思うかもしれません。しかし、子どもが多い世帯ほど教育費の負担が大きくなることから、多子世帯を対象とした支援制度もあります。
その一つが、2025年度から拡充された、いわゆる「多子世帯の大学無償化」です。
扶養する子どもが3人以上いる多子世帯では、一定の要件を満たせば、所得制限なく、大学などの授業料・入学金が一定額まで減免されます。
ただし、原則として扶養する子どもが3人以上いる間が対象です。たとえば、第一子が就職して扶養から外れ、扶養する子どもが2人になると、多子世帯としての支援対象から外れます。
大学の場合、減免される金額の上限は次のとおりです。
<支援金額の上限>
国公立大学
授業料:年54万円
入学金:28万円
私立大学
授業料:年70万円
入学金:26万円
※支援額の上限は学校の種類などによって異なります。
たとえば私立大学なら、4年間で授業料最大280万円、入学金最大26万円の合計最大306万円が減免の対象となります。
子どもが多ければ、その分、家庭全体で負担する教育費は大きくなります。一方で、大学進学時にはこうした多子世帯向けの支援を受けられる場合もあるため、子どもの人数だけで教育費の負担を単純に比較することはできません。
子どもの数だけでは決まらない? 教育費を左右する進路選択
一人っ子でも兄弟姉妹がいても、教育費の負担を抑えながら、希望する教育を受けられるのが理想です。一方、教育費はかけようと思えば際限なく増やせる支出でもあります。教育費を優先しすぎて親の老後資金が不足すれば、将来的に子どもに経済的な負担をかけることにもなりかねません。
文部科学省の「子供の学習費調査」にある、幼稚園から高校まで15年間の学習費総額を見ると、公立・私立のどちらを選ぶかによって、教育費に大きな差が出ることがわかります。
たとえば、子ども2人がともに幼稚園だけ私立で、小学校から高校まですべて公立に通った場合、15年間の学習費総額は1人あたり約665万円、2人で約1,330万円です。
一方、子どもが1人でも、幼稚園から高校まですべて私立に通った場合は約1,969万円となり、子ども2人の15年間の総額を上回ります。
このように、教育費は子どもの人数だけで決まるものではありません。公立・私立のどちらを選ぶか、塾や習い事にどこまでお金をかけるかなど、家庭の教育方針によっても大きく変わります。
「一人っ子だから」と教育費をかけすぎる必要はありませんし、兄弟姉妹が多くても、支援制度などを活用することで教育費の負担を抑えられる場合があります。子どもの人数にかかわらず、「どんな教育を選び、どこまでお金をかけるのか」を家計全体とのバランスを考えながら決めることが重要になるでしょう。
■参考
厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査/Ⅰ世帯数と世帯人員の状況」(PDFがダウンロードされます)
文部科学省「2023年度 子供の学習費調査/8 兄弟姉妹の数及び調査対象者の出生順位別学習費」
文部科学省「令和7年度から、子供3人以上の世帯への大学等の授業料等の無償化を拡充します!」(PDFがダウンロードされます)
文部科学省「2023年度 子供の学習費調査/調査結果の概要【令和8年1月16日差替】」(PDFがダウンロードされます)







