「銀行に預けてもほとんど利息がつかない」
そんな時代が長く続いていましたが、日本銀行の金融政策の転換によって、状況は大きく変わっています。銀行の預金金利は上昇し、定期預金でも年1%を超える商品が見られるようになりました。
一方、元本割れを避けながら年1%を超える金利で運用できる選択肢として、個人向け国債も注目されています。
では、100万円を10年間運用するなら、定期預金と個人向け国債のどちらがお得なのでしょうか。それぞれの特徴を押さえながら、2026年8月時点の金利をもとに10年後の受取額を比較してみます。
定期預金の金利がついに1%台に
大手3行(みずほ・三菱UFJ・三井住友)の定期預金金利を見てみましょう。
スーパー定期預金・300万円未満 (2026年8月12日時点)
| 預入期間 | 金利 |
|---|---|
| 1年 | 0.500% |
| 3年 | 0.800% |
| 5年 | 1.000% |
| 7年 | 1.100% |
| 10年 | 1.250% |
出所:各銀行公式ページをもとに筆者作成
※大手3行すべて同じ金利
かつては「定期預金に預けてもほとんど増えない」といわれていましたが、10年定期で年1%を超える水準まで上昇しています。
100万円を定期預金に10年預けるといくらになる?
今回比較する10年定期預金は、預け入れ時の金利が満期まで変わりません。
100万円を金利1.250%の10年定期に預けると、半年複利型の場合、約13万2,700円の利息がつきます。利息には20.315%の税金がかかるため、税引後の利息は約10万5,700円です。
つまり、100万円が約110万5,700円になる計算です。
※実際の利息計算や端数処理などは金融機関によって異なります。
2026年8月募集の個人向け国債「変動10年」は年1.87%
元本割れがなく、利子も期待できる商品として、個人向け国債があります。個人向け国債は、証券会社、銀行、郵便局などの金融機関で1万円から購入でき、利子は半年ごとに受け取れます。
個人向け国債には「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類があります。
「変動10年」は適用利率が半年ごとに見直されるのに対し、「固定5年」と「固定3年」は購入時の利率が満期まで変わりません。
2026年8月募集の個人向け国債「変動10年(第197回)」の当初適用利率は、年1.87%です。
参考までに、「固定5年(第185回)」は年2.06%、「固定3年(第195回)」は年1.71%となっています。2026年8月募集分では「変動10年」よりも「固定5年」のほうが高い利率です。
これは、「変動10年」と「固定5年」では金利の決まり方が異なるためです。ただし、この時点の利率だけを見て「固定5年のほうがお得」とは一概にいえません。
固定5年は年2.06%の利率が満期まで変わりませんが、変動10年は半年ごとに利率が見直されます。そのため、今後さらに市場金利が上昇すれば、変動10年の適用利率も上昇する可能性があります。
2026年8月募集時の金利を5年間確保できるのが「固定5年」、将来の金利上昇を取り込めるのが「変動10年」という違いがあり、どちらが有利になるかは今後の金利動向によって変わります。
100万円で「変動10年」を購入すると10年後いくらになる?
「変動10年」は前述したとおり、半年ごとに金利が見直されます。そのため、10年後にいくらになるのかは確定しません。ここでは、2026年8月募集分の年1.87%という金利が10年間続いたと仮定して、計算してみます。
「変動10年」を100万円購入した場合
100万円×1.87%×10年=18万7,000円
利息の合計は18万7,000円となります。
実際は、国債の利息は半年ごとに受け取ります。
10年間で受け取る税引後利息の合計は約14万9,000円です。
元本100万円と合わせると約114万9,000円です。
10年定期預金と個人向け国債「変動10年」の比較
それぞれの試算結果を表にまとめました。
| 10年定期預金 | 個人向け国債「変動10年」 | |
|---|---|---|
| 当初金利 | 年1.25% | 年1.87% |
| 元本 | 100万円 | 100万円 |
| 10年間の税引後利息 | 約10万5,700円 | 約14万9,000円 |
| 元本+利息合計 | 約110万5,700円 | 約114万9,000円 |
| 差 | 約4万3,300円
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筆者作成
※個人向け国債「変動10年」は年1.87%が10年間続いたと仮定した試算
100万円の10年後の運用結果は、定期預金は約110万5,700円、個人向け国債「変動10年」は約114万9,000円となり、その差は約4万3,300円となりました。
本当の差は10年後にならないとわからない
定期預金は、預け入れ時の金利が固定されるので、満期まで保有すれば、受け取れる利息はあらかじめ計算できます。一方、個人向け国債「変動10年」の適用利率は半年ごとに見直されます。
「変動10年」の金利は「基準金利×0.66」で決まり、最低でも年0.05%が保証されています。
つまり、基準金利が上昇すれば受け取れる利息が増える可能性があり、反対に基準金利が低下すれば、受け取れる利息が少なくなる可能性があります。
今回の試算は年1.87%が10年間続いたと仮定した場合の試算結果であるため、実際に10年間でどれだけの差がつくかは、現時点ではわかりません。
今後、金利は上昇していくと予想するなら、現在の金利が固定される定期預金よりも、半年ごとに見直される個人向け国債「変動10年」のほうが、金利上昇の恩恵を受けられる可能性があります。
つまり、この2つを比較する際は、「現在の金利が高いのはどちらか」だけでなく、「今後金利がどう動くのか」まで含めて考える必要があるということです。
定期預金と個人向け国債のその他の違い
定期預金と個人向け国債の運用結果を比較しましたが、その他にも違いがあります。
<お金の引き出しやすさ>
途中でお金が必要になった場合の換金のしやすさにも違いがあります。
定期預金は、満期前でも中途解約できます。ただし、一般的には当初の約定金利より低い「中途解約利率」が適用されるため、満期まで預けた場合より受け取れる利息は少なくなります。適用される利率は金融機関や商品、預入期間などによって異なります。
一方、個人向け国債は原則として発行後1年間は中途換金できません。1年経過後はいつでも換金できますが、「直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685」が差し引かれます。簡単にいえば、直近1年分程度の税引後利息を返すイメージです。
個人向け国債は1万円単位で中途換金できるのも特徴です。たとえば100万円分を保有している場合、必要な10万円分だけを換金し、残りの90万円分はそのまま保有できます。
定期預金は原則として一部解約はできませんが、金融機関や商品によっては条件つきで可能な場合もあります。
「必要な分だけ換金できる」という点では、発行後1年を経過した個人向け国債にメリットがあります。
<安全性の高さ>
定期預金と個人向け国債は、どちらも安全性の高い金融商品ですが、お金が守られる仕組みには違いがあります。
定期預金は預金保険制度の対象です。万が一、金融機関が破綻した場合でも、1金融機関につき預金者1人あたり元本1,000万円までと、破綻日までの利息が保護されます。
一方、個人向け国債は、国が発行する債券であり、元本と利息の支払いは、国が責任を持って行います。
このように、仕組みは異なるものの、どちらも元本割れを避けたい人の資金置き場として利用できます。さらに、金利が上昇したことで、これまでの超低金利時代よりも多くの利息を期待できるようになりました。「安全性を重視しながら増やす」という選択肢として、定期預金や個人向け国債の魅力は増しています。
まとめ
ここまで見ると、2026年8月時点の金利だけなら個人向け国債「変動10年」が有利に見えます。ただし、「定期預金か個人向け国債か」の二者択一で考える必要はありません。たとえば100万円のうち、50万円を定期預金、残り50万円を個人向け国債に振り分ける方法もあります。
定期預金についても、100万円すべてを10年定期に預けるのではなく、1年、3年、5年など期間を分けて預ける方法もあります。こうすれば、今後さらに金利が上昇した場合、満期を迎えた定期預金をより高い金利の定期預金に預け替えることが可能となります。
「金利のある世界」が戻ってきたことで、同じ100万円でも、どこに、何年置くかによって、受け取れる利息に数万円単位の差が生まれるようになりました。
これは、投資信託や株式でリスクを取って大きなリターンを狙わなくても、預金や国債で安全性を重視しながらお金を増やせる時代になってきたともいえます。
だからこそ、自分に合った資金の置き場所を選ぶことが大切です。金利の動きにも目を向け、定期的にお金の置き場所を見直していきましょう。
※金利・募集条件は2026年8月時点のものです。最新の金利は各金融機関・財務省の公式サイトをご確認ください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品への投資・預入れを勧誘するものではありません。判断はご自身の責任で行ってください。
■参考
