2024年以降、日本銀行の金融政策転換をきっかけに、超低金利が当たり前だった時代が終わり、「金利のある世界」へと移行しています。住宅ローンを変動金利で借りている人の中には、金利上昇への不安から固定金利への借り換えを検討している人もいるでしょう。
とはいえ、現在の住宅ローンの金利は、本当に高いのでしょうか。
今回は住宅ローン金利の20年間の変化を振り返りながら、これから住宅ローンを利用する際に押さえておきたいポイントを解説します。
住宅ローンは長期間にわたって返済を続けるため、わずかな金利差でも家計への影響は小さくありません。特に金利が上昇する局面では、「今の金利は高いのか」「固定金利と変動金利のどちらを選ぶべきか」と迷う人も多いでしょう。
そこでまず、現在の金利水準を過去と比較するために、日本の住宅ローン金利がどのような環境のもとで推移してきたのかを振り返ってみます。
歴史的低水準が続いた日本の住宅ローン
住宅ローン金利を考えるうえで、まず知っておきたいのが日本の金利環境です。
日本銀行は1999年、景気を下支えするため、政策金利をほぼ0%まで引き下げる「ゼロ金利政策」を導入しました。その後も量的緩和やマイナス金利政策を実施し、日本では長年にわたって超低金利の環境が続きました。
こうした金融政策を背景に、多くの金融機関では住宅ローンの変動金利が0.3~0.5%程度という歴史的な低水準で推移してきました。
しかし、2024年3月、日本銀行は、賃金と物価の好循環の強まりなどから、2%の物価安定目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、マイナス金利政策を解除しました。その後も政策金利は段階的に引き上げられ、それに伴って住宅ローン金利も少しずつ上昇しています。
住宅ローン金利は20年でどう変わった? フラット35の推移
住宅ローンは、固定金利と変動金利で金利が決まる仕組みが異なります。変動金利は日本銀行の政策金利(短期金利)の影響を受ける一方、固定金利は長期金利(10年国債利回り)の影響を受けます。
長期金利は、将来の景気や物価の動きを先読みして敏感に変動するため、住宅ローンでは固定金利のほうが変動金利より先に動く傾向があります。
そこで、固定金利の代表例として、住宅金融支援機構の「フラット35」の金利がこの20年間でどのように変化してきたのか見てみましょう。
出所:住宅金融支援機構「【フラット35】借入金利の推移」をもとに筆者作成
※「返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下」の各年8月の最低金利を使用
※2017年10月から団信特約料を金利に含む制度へ変更されています。
2006年から2008年頃までは3%程度で推移していましたが、その後は低下傾向となり、2016年1月に日本銀行がマイナス金利政策を導入すると、歴史的な低水準となりました。
その後、2021年頃から再び上昇傾向となり、特に2025年から2026年にかけては上昇幅が大きくなりました。
ただし、長期的に見ると、2026年8月時点の固定金利は2006~2008年頃の水準より少し高いくらいで、過去20年で見れば、むしろ2010年代から2024年頃までが例外的に低かったといえるかもしれません。
住宅ローン金利は20年でどう変わった? 変動金利の推移
変動金利は銀行ごとに商品内容や優遇幅が異なり、長期の統一データは公表されていません。そこで今回は、20年以上の金利推移を公開しているSBI新生銀行の住宅ローンを代表例として、変動金利の動きを見てみましょう。
出所:SBI新生銀行「パワースマート住宅ローン 過去金利水準推移」をもとに筆者作成
※「変動金利(半年型)」の各年8月の借入金利を使用
※2006年~2024年までは手数料定額型、2025年以降は手数料定率型の金利となります。
グラフを見ると、変動金利は2006年の1.675%から2008年には2.10%まで上昇しましたが、その後は低下傾向が続いています。2011~2013年には0.98%、2016年には0.55%まで下がり、その後も2024年までおおむね0.6%台の低い水準で推移しました。
ところが、2024年に日本銀行がマイナス金利政策を解除し、利上げへと転じると状況が変わります。商品条件の違いはあるものの、2025年8月は0.68%、2026年8月には1.08%となっており(※)、変動金利も上昇局面に入ったことが分かります。それでも、2006~2010年頃の水準までは上がっていません。
※執筆時、2026年8月の情報です。
グラフからもわかるように、変動金利は固定金利ほど大きく動いていません。固定金利は長期金利の影響を受け、将来の景気や物価を織り込んで比較的早く動く一方、変動金利は短期金利の影響を受けるため、低金利政策が続いた期間は変動幅が小さく、固定金利より遅れて動く傾向があります。
過去20年間は「変動金利の低さ」が際立つ時期が長く続きましたが、足元ではその状況にも変化が表れていることがグラフから読み取れます。
今後も金利は上がり続けるのか
さて、皆さんが最も知りたいのは、「住宅ローン金利は今後も上がり続けるのか」という点ではないでしょうか。
日本銀行は2026年6月の金融政策決定会合で政策金利を1.0%程度へ引き上げ、7月の会合では1.0%程度に据え置きました(※)。
※9月の会合では1.25%程度へ引き上げています。日銀は、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく考えを示しています。追加利上げの方向性は示されているものの、実施時期やペースは今後の経済・物価・金融情勢次第となります。
将来の金利水準は予測できませんが、日本銀行が追加利上げの可能性を示している以上、金利上昇も想定した返済計画を立てておくことが重要です。
これからの住宅ローン選びのポイント
金利上昇局面では、「一番金利が低い住宅ローン」を選ぶことが正解とは限りません。大切なのは、将来の金利上昇も見据え、無理なく返済できる借入額を設定したうえで、自分の家計やライフプランに合った金利タイプを選ぶことです。
固定金利は変動金利より金利が高くても、将来の金利動向を気にしないでいられる安心感があります。一方で、金利上昇に対応できる十分な貯蓄があり、繰り上げ返済も視野に入れられるなら、変動金利を選ぶという考え方もあります。
住宅ローンを選ぶ際は、金利だけでなく、次のような点も確認しましょう。
- 毎月の返済額に無理はないか
- 教育費や老後資金を確保できる返済計画になっているか
- 繰り上げ返済をしやすいか
- 団体信用生命保険の保障内容
将来の金利動向を正確に予測することは誰にもできません。しかし、今回の金利推移からも分かるように、これまでの超低金利が続くことを前提に住宅ローンを考える時代ではなくなりました。だからこそ、「金利が上昇しても返済を続けられるか」という視点で住宅ローンを選ぶことが、これからますます重要になるでしょう。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・ローンの利用を勧誘するものではありません。借入・返済計画の判断はご自身の責任で行ってください。
■参考
長・短期プライムレート(主要行)の推移 : 日本銀行 Bank of Japan
日本銀行「政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨(2026年6月15、16日開催分)」
日本銀行「金融政策決定会合における主な意見(2026年7月30、31日開催分)
日本銀行「金融市場調節方針の変更について(2026年9月金融政策決定会合)」
住宅金融支援機構「金利がある世界での的確な住宅ローンの選び方」



