もし手元に500万円の余裕資金があったら、どう使いますか? 住宅ローンの繰り上げ返済に充てるか、NISAなどで運用するか、迷うところです。
繰り上げ返済をすれば、その分だけ将来支払う利息を確実に減らせます。一方、投資には元本割れのリスクがあるものの、長く運用することで、繰り上げ返済で減らせる利息以上に資産を増やせる可能性もあります。
そこで、最新の住宅ローン金利やインデックスファンドの運用実績をもとに、500万円を繰り上げ返済と投資に使った場合、どちらがお得なのか、具体的な数字で比べてみました。
住宅ローン金利の上昇で繰り上げ返済の効果が拡大
住宅ローン金利は上昇傾向にあります。2026年9月から、三菱UFJ銀行と三井住友銀行は変動型住宅ローンの基準金利を年3.375%に引き上げました。日銀の利上げなどを背景に、住宅ローン金利の上昇が続いています。
大手3行の2026年10月時点の新規借入時の変動金利(適用金利の一例)は、次のとおりです。
- 三菱UFJ銀行:年1.195%
- 三井住友銀行:年1.525%~
- みずほ銀行:年1.275%~
固定金利も上昇しています。長期金利の代表的な指標である新発10年国債の利回りは、2026年9月1日に一時3.0%に達し、1996年以来、約30年ぶりの高水準となりました。現在も3%前後で推移しています。
長期金利の上昇に伴い、全期間固定型の住宅ローン「フラット35」の金利も上昇し、2026年10月の最頻金利は、借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下の場合で年3.83%となっています。
こうした金利上昇局面で、変動金利の住宅ローンを返済している人にとって選択肢の一つとなるのが、繰り上げ返済です。
繰り上げ返済は、元金の一部を予定より早く返済することで、その元金にかかる利息を減らせる効果があります。そのため住宅ローン金利が高いほど、繰り上げ返済による利息軽減効果も大きくなります。
繰り上げ返済には、毎月の返済額を変えずに返済期間を短くする「期間短縮型」と、返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」があります。一般的に、利息をより多く減らせるのは「期間短縮型」です。
500万円を繰り上げ返済すると利息はいくら減る?
次の条件で、500万円を期間短縮型の繰り上げ返済に充てた場合、いくら利息が減らせるのか試算してみましょう。
<試算条件>
- 住宅ローン残高:3,000万円
- 残りの返済期間:20年
- 返済方法:元利均等返済
- ボーナス返済:なし
- 繰り上げ返済手数料:なし
- 今後も同じ金利が続くものとする
| 住宅ローン金利
|
毎月の返済額
|
短縮できる期間
|
利息軽減額
|
|---|---|---|---|
| 年1.0%
|
約13万8,000円
|
約3年7カ月
|
約99万円
|
| 年1.5%
|
約14万5,000円
|
約3年9カ月
|
約156万円
|
| 年2.0%
|
約15万2,000円
|
約3年11カ月
|
約216万円
|
| 年2.5%
|
約15万9,000円
|
約4年1カ月
|
約282万円
|
| 年3.0%
|
約16万6,000円
|
約4年3カ月
|
約352万円
|
※SBI新生銀行「住宅ローン 繰り上げ返済シミュレーション」を使用して筆者試算
※実際の金額は返済時期、金融機関の計算方法、手数料などによって異なります。
金利が年1%なら、利息は約99万円減らすことができます。年2%なら約216万円、年3%なら約352万円の利息軽減額となります。
繰り上げ返済による効果は、住宅ローン金利に相当する利息負担を減らすことに近いと考えられます。たとえば金利が年2%で今後も変わらないと仮定すれば、年2%分の利息負担を抑える効果が期待できます。
ただし、住宅ローン控除を受けている期間中は、繰り上げ返済によって年末のローン残高が減ると控除額も減る可能性があります。また、期間短縮型の繰り上げ返済によって償還期間が一定の要件を満たさなくなると、住宅ローン控除を受けられなくなる場合もあります。そのため、控除期間中は繰り上げ返済を急がないほうが有利なケースもあります。
500万円をNISAで20年間運用したらいくらになる?
一方、500万円を投資に回した場合は、どのくらい増える可能性があるのでしょうか。
ここでは、運用益が非課税になるNISAを利用して、インデックスファンドで運用するケースを考えてみます。
新NISAの年間投資枠は、つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円を合わせて360万円です。そのため、500万円全額を1年間でNISAに投資することはできません。
そこで今回は、つみたて投資枠と成長投資枠を利用し、最初の年に合計360万円、翌年に残りの140万円を投資するものとします。試算を簡略化するため、初年度に投資する360万円は20年間、翌年に投資する140万円は19年間運用したものとして計算します。
利回りを考えるうえで参考になるのが、全世界の株式に幅広く投資するインデックスファンドの過去の実績です。代表的な指数である「MSCI ACWI」の過去20年間の推移を見ると、2006年6月末を100とした指数は、2026年6月末には718となっています(※)。これをもとに年平均成長率を計算すると、約10.4%です。
※出所:三菱UFJアセットマネジメントが示すMSCI ACWI(円ベース・配当込み)の過去20年間の推移
ただし、これはあくまで過去20年間の実績であり、今後も同じ利回りで運用できるとは限りません。そこで今回は、過去の実績よりも控えめに、年3%、5%、8%の3つの利回りを仮定して、500万円を運用した場合の資産額を比較します。
| 想定利回り
|
20年後の資産額
|
運用で増えた金額
|
|---|---|---|
| 3%
|
約896万円
|
約396万円
|
| 5%
|
約1,309万円
|
約809万円
|
| 8%
|
約2,282万円
|
約1,782万円
|
※最初の年に360万円、翌年に140万円を投資するものとし、試算上、それぞれ20年間、19年間複利運用したものとした場合。筆者試算
年3%で運用できた場合でも、500万円は約896万円となり、約396万円増える計算です。年5%なら約809万円、年8%なら約1,782万円の運用益となります。
先ほどの繰り上げ返済と比べると、今回の試算では、住宅ローン金利が年1~3%の場合、投資を年3%以上で運用できれば、20年後の運用益が繰り上げ返済による利息軽減額を上回る結果となりました。
ただし、今回の試算条件では、繰り上げ返済による利息軽減効果をあらかじめ見込めるのに対し、投資で得られる利益は確定していません。また、表の年3%、5%、8%は、毎年必ずその割合で資産が増えるという意味ではなく、20年間を通してその利回りで運用できたと仮定した場合の試算です。
実際の運用では、大きく上昇する年もあれば、下落する年もあります。お金が必要になったタイミングで元本を下回っている可能性もあります。
繰り上げ返済か投資か、二者択一でなくてもいい
今回の試算だけを見れば、500万円を投資に回したほうが大きなリターンを得られる結果となりました。しかし、実際の判断はそこまで単純ではありません。
繰り上げ返済は、将来支払う利息を確実に減らせるのがメリットです。一方、投資は価格変動のリスクがあるものの、長期で運用することで、より大きなリターンを得られる可能性があります。どちらが向いているかは、年齢や家族構成、家計の状況、今後の収支などによって変わります。
たとえば、変動金利で住宅ローンを借りていて、今後さらに金利が上がると教育費などの支出と重なって家計が苦しくなりそうな人や、定年までに住宅ローンを完済したい人は、繰り上げ返済を優先したほうがよい場合があります。
一方、10年以上使う予定のない余裕資金がある人や住宅ローン控除を受けている人、収入が安定していて一時的な値下がりにも耐えられる人は、投資に回すことも選択肢になります。
また、「繰り上げ返済」か「投資」か、どちらか一方に決める必要もありません。
たとえば500万円の余裕資金があるなら、200万円を現金で残し、200万円をNISAで運用、100万円を繰り上げ返済するといった方法もあります。現金をある程度残しておけば、急な出費にも対応でき、今後さらに住宅ローン金利が上昇した場合には、その資金を使って追加で繰り上げ返済することもできます。
まずは、住宅ローンの金利が上がったときに返済額がどの程度増えるのか、その負担に家計が耐えられるのかを確認しておきましょう。
そのうえで、繰り上げ返済で確実に減らせる利息と、投資で期待できるリターンや値下がりのリスクを比べながら、自分の家計に合った資金の配分を考えるとよいでしょう。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品への投資を勧誘するものではありません。試算の利回りは仮定であり、将来の運用成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。