失業したときや、育児・介護のために仕事を休んだときなど、働けない期間や収入が減ったときの生活を支えてくれる雇用保険。2026年8月1日から、こうした雇用保険のさまざまな給付について、下限額や上限額などが変更されました。
2026年8月から雇用保険の給付額が変更!失業給付や育休給付はいくらに変わった?
会社員なら条件を満たせば、全員が加入している雇用保険。日頃はそのありがたさをあまり意識していませんが、失業時の失業給付、出産後の育児休業給付など、いざという時に様々な給付金を受け取ることができます。今回、2026年8月の改正は、全体としてその給付額の基準が引き上げられる内容です。ただし、「上限額が上がったから、自分がもらえる給付も増える」とは限りません。賃金などによっては今回の変更の影響を受けない人もいるほか、一部では逆に給付を受けられなくなるケースもあります。
2026年8月からの変更点を、具体的に見るとともに、雇用保険の給付自体も改めて確認しましょう。
雇用保険の給付額は毎年見直されている
雇用保険というと、会社を辞めたときにもらう「失業給付」を思い浮かべる人が多いかもしれません。
実際は失業給付以外にも、給料が支払われない育児休業中の生活を補う「育児休業給付」や、家族の介護のために仕事を休んだ場合の「介護休業給付」、60歳以降に賃金が大きく下がった場合の「高年齢雇用継続給付」、育児のために時短勤務をして賃金が下がった場合の「育児時短就業給付」など、多くの種類があります。
[表1]
これらの給付には、受給額を計算するための基準額や上限額などが設けられており、賃金水準の変化にあわせて毎年見直されています。
2026年8月の変更も、新しい給付制度がスタートしたというものではなく、賃金の変動などを反映した年次改定です。失業給付の基本手当については、2025年度の平均給与額が前年度より約2.7%上昇したことなどを受け、上限額などが引き上げられました(厚生労働省「毎月勤労統計調査」の平均給与額による)。
失業給付は下限額・上限額ともにアップ
そこで、会社員に関係が深い万一のときの給付に絞って、変更額を見てみましょう。まず、失業したときに受け取る「基本手当」です。
基本手当日額は、原則として離職前の賃金から算出された「賃金日額」をもとに計算されますが、下限額と年齢別の上限額が決められています。
2026年8月からは、上限額が29歳以下では7,255円から7,450円、30~44歳以下では8,055円から8,270円、45~59歳以下では8,870円から9,110円、60~64歳以下では7,623円から7,830円へ、それぞれ引き上げられました。
[表2]
また、下限額は年齢にかかわらず2,411円から2,562円へ、1日あたり151円の引き上げです。
たとえば、45~59歳で最高額が適用される人の場合、1日あたり240円増えます。90日分を受給するケースなら、単純計算で次のように受給額が増えることになります。
240円×90日=2万1,600円
ただし、これは45~59歳で上限額が適用され、90日分を受給した場合の例です。実際の基本手当日額や給付日数は、離職前の賃金や年齢、離職理由などによって異なります。
注意点としては、基本手当日額は、賃金日額に対して原則給付率50~80%(60~64歳は45~80%)で計算されます。ただし、年齢別の上限があります。例えば、29歳で算出上の賃金日額が1万7,000円の場合、計算に用いる賃金日額は上限1万4,900円となり、基本手当日額は上限の7,450円となります。原則給付率50%以上となっていても、青天井に給付を受け取れるわけではないことは認識しておきましょう。
育児休業給付なども上限額が引き上げ
育児休業中に受け取る育児休業給付も、2026年8月から上限額が引き上げられました。
育児休業給付は、原則として育休開始から180日目までは休業開始前賃金の67%、181日目以降は50%が支給されます。今回変わったのは、この支給率そのものではなく、受け取れる給付の上限額です。
支給日数が30日の場合、67%が適用される支給単位期間の上限は32万3,811円から33万2,454円へ、50%の場合は24万1,650円から24万8,100円へ引き上げられました。
ただし、上限額が上がったからといって、育休を取るすべての人の給付額が増えるわけではありません。
たとえば休業前の月額賃金が30万円で、育休中に会社から賃金が支払われない場合、67%なら給付額は約20万1,000円です。これは改定前の上限額32万3,811円にも届いていません。そのため、上限額が33万2,454円に上がっても、このケースでは受給額は変わりません。
一方、休業前の賃金が高く、これまで上限額で給付が頭打ちになっていた人は、今回の変更によって受給額が増える可能性があります。
育児関連では、このほか、子の出生後8週間以内に夫などが産後パパ育休(出生時育児休業)を取得し、一定の要件を満たした場合に支給される「出生時育児休業給付金」の上限が30万2,223円から31万290円へ引き上げられました。
介護休業給付も、上限が35万6,574円から36万6,222円へ引き上げられています。
賃金が一定以上だと給付されない制度も
もうひとつ知っておきたいのが、雇用保険に加入していれば、誰でも同じ条件でこれらの給付を受けられるわけではないことです。
ただし、「年収○万円以上なら対象外」といった一律の所得制限ではありません。制度によって、休業中や時短勤務中の賃金、休業前の賃金との割合などによって、給付額が減ったり、支給されなかったりします。
たとえば育児休業給付では、育休中にも会社から一定以上の賃金が支払われている場合、給付が減額されることがあります。休業前の賃金を基準とした一定額の80%以上の賃金が支払われる場合には、その期間の育児休業給付は支給されません。
高年齢雇用継続給付にも、賃金による支給条件があります。
高年齢雇用継続給付は、原則として60歳以上65歳未満の一般被保険者で、被保険者であった期間が5年以上あるなどの要件を満たし、60歳時点と比べて賃金が75%未満に低下した場合などに支給されるものです。2026年8月から支給限度額は38万6,922円から39万7,369円へ引き上げられましたが、支給対象月に受け取った賃金が39万7,369円以上であれば、高年齢雇用継続給付は支給されません。
2歳未満の子どものために時短勤務をした場合などに受け取れる育児時短就業給付も同様です。支給限度額は47万1,393円から48万4,121円へ引き上げられましたが、支給対象月の賃金が48万4,121円以上の場合は給付されません。
つまり、今回の改定で上限額などが引き上げられても、実際にいくら受け取れるかは、それまでの賃金や休業・時短勤務中の給与などによって変わります。
「最低限度額」が上がって、逆にもらえなくなる人も
今回の改定は、全体として見れば給付額の基準が引き上げられる内容です。
しかし、ごく一部では、これまで受け取れていた給付が受けられなくなる可能性もあります。
関係するのが、高年齢雇用継続給付と育児時短就業給付です。この2つの給付では、2026年8月から「最低限度額」が2,411円から2,562円へ引き上げられました。
「最低限度額」という名前から、「最低でも2,562円はもらえるようになった」と思うかもしれません。しかし、この2つの給付では逆です。
算定された給付額が最低限度額を超えない場合、給付は支給されません。
たとえば、ほかの条件に変化がなく、給付額が2,500円と算定されるケースを考えてみます。2026年7月までは最低限度額が2,411円だったため、2,500円はこれを上回り、支給対象でした。ところが8月からは最低限度額が2,562円になります。2,500円は新しい最低限度額以下になるため、支給されなくなります。
ただし、今回の変更によって多くの受給者が一斉に給付を失うわけではありません。影響を受けるのは、算定された給付額が旧最低限度額を超え、新しい最低限度額以下となる一部の人です。
今回の改定における「損するケース」としては限定的ですが、「最低限度額が上がる=必ず有利になる」とは限らない点には注意しておきましょう。
上限額だけでなく、自分の支給条件も確認を
2026年8月の改定では、失業給付の最低額・最高額をはじめ、育児休業給付や介護休業給付など、多くの給付で基準となる金額が引き上げられました。
ただし、全員の受給額が一律に増えるわけではありません。育児休業給付などでは、もともとの給付額が上限に達していなければ、上限額が引き上げられても受給額は変わりません。
また、休業中や時短勤務中などの賃金によっては、給付が減額されたり、支給されなかったりすることもあります。さらに、高年齢雇用継続給付と育児時短就業給付では、最低限度額の引き上げによって、一部の少額受給者が給付を受けられなくなるケースもあります。
雇用保険の給付を利用する場合は、「上限○万円」といった金額だけでなく、自分の賃金や働き方では実際にいくら受け取れるのか、支給条件もあわせて確認しておきましょう。





