お金が減る経験からも、学べることがある。
もちろん、投資をすれば資産が減ることだってある。親としては「子どものお金を減らしてしまった」と不安になるだろう。しかし田嶋さんは、そうした経験から得られる事もあると話す。
「たとえば100万円が80万円になって、うれしい人はいないと思います。ただ、子どもには時間があります。長期で向き合うことによってリカバリーしやすくなることもありますし、何より経験値になります」
なぜ下がったのだろう。世界で何が起きたのだろう。実際に自分のお金が動くからこそ、経済のニュースが急に「自分ごと」になる。そして、子どもの頃からお金について考える経験は、将来自分を守る力にもなるという。
「小さい頃から家庭でお金について話していると、お金に対していい意味でアンテナを張れるようになります。たとえば『年利20%で増えます』と言われたときに、『そんなにうまい話があるの?』と気付けるリテラシーを身に付けることも、重要だと思います」
親と子が、ともに学び合う。
では、何歳くらいから子ども自身を投資に参加させればいいのだろう。谷さんは「個人差が大きい」としたうえで、子どもの吸収力は大人が思っている以上に高いと話す。「 SBI証券が金融教育のイベントを行うなかでも、我々プロと対等に投資について話す高校生や、インフレなどの経済用語を理解している小学生に出会うことがあります」
小川さんは、イベントで出会った小学校高学年くらいの女の子のエピソードが印象に残っているという。その女の子は、あるエンターテインメント企業の株式を持っていると言うので、なぜ買ったの?と聞くと、その企業につぶれてほしくないから、と答えたそうだ。
「それこそが株式投資なんじゃないかと思うんです。好きなものがあって、それを運営している企業があると知る。小学生だから投資を理解できない、ということはないと思います」
企業を応援する。自分が好きな商品をつくっている企業について調べる。逆に、世の中で流行しているものを、子どもから親が教えてもらうこともあるだろう。そんなところからも、経済との接点は生まれる。金融教育は、親から子への一方通行でなくてもいいということだ。
こどもNISAから、家族の「お金の会話」を始めよう。
こどもNISAが家族にもたらす価値として、谷さんは「早い段階から投資の重要性に気付けること」と、「家族全体で使える非課税枠が広がること」を挙げる。
さらに、これまで「投資するお金なんてない」と考えていた人にも、こどもNISAが最初の一歩を踏み出すきっかけになる可能性もありそうだ。そして小川さんの示す、もっと身近な価値になるという点も大きい。
「こどもNISAは、家族のコミュニケーションツールになるんじゃないかと思っています。これをきっかけに、子どもとお金についての会話が増えればいいなと思います」
「この企業って何をしているの?」「何で値段が上がったんだろう?」「自分のお金、いまどうなっている?」そんな会話を、日常のなかで少しずつ重ねていくこと。親がすべてを知っている必要はなく、増えたら、なぜ増えたのかを一緒に考えることができるし、減ったら、世界で何が起きているのかを話してみる。
「たった数年前に100円で買えたものが、いまは同じ金額では買えません。子どもたち自身がこんな状況に直面しているいまだからこそ、お金と社会の繋がりと成り立ちに触れてほしいと切に願っています」と、谷さんは言う。
こどもNISAは、子どもの未来のために資産を育てる制度であると同時に、家族で「お金」について話し始めるきっかけにもなりそうだ。2027年1月の制度開始に向けて、家族のお金にいま一度向き合ってみたい。その第一歩と家族の小さな会話の積み重ねが、いつか子ども自身が、自分のお金と人生を選び取る力になっていきそうだ。
*本記事は情報提供を⽬的としたものであり、特定の⾦融商品への投資を勧誘するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。投資判断はご⾃⾝の責任で⾏ってください。
*こどもNISAの制度内容は 2026年10⽉時点の情報です。最新情報は⾦融庁の公表資料等でご確認ください。
小川正美(おがわ・まさみ))
SBI証券 カスタマーサクセス推進部長兼金融教育推進室長 金融教育インストラクター。新卒で当時のSBIイー・トレード証券に入社し、支店で資産相談(営業)やカスタマーセンターで顧客対応に携わった後、商品企画やウェブサイト構築、口座開設促進などを担当。現在は顧客の声を生かしたサービス改善に取り組む。私生活では二女一男の父。休日は長男のソフトボール指導にも汗を流す。
田嶋恵理子(たじま・えりこ)
SBI証券 カスタマーサクセス推進部 金融教育推進室 金融教育インストラクター。対面証券に新卒入社し、10年間リテール営業の最前線に立つ。家族の転勤を機に退職後、J-FLEC認定アドバイザーとして講師業へ転身。1級FP技能士と保育士資格を活かし、専門知識と"やさしい伝え方"を強みに活動中。2025年にSBI証券へ入社。私生活では、小学2年生の息子のサッカー応援に汗を流す母でもある。
谷健一郎(たに・けんいちろう)
SBI証券 カスタマーサクセス推進部 金融教育推進室 金融教育インストラクター。日系・米国系・ベンチャー証券などを経て、2020年にSBI証券へ。平成バブルからIT革命、9.11同時多発テロ、リーマン・ショック、コロナ・パンデミックまで、数々の相場の転換点をマーケットの現場で見てきた。私生活では一女一男の父。中学受験から大学受験まで、合格も浪人も経験しながら教育費のリアルを肌で知る。
取材・文:須賀美季 編集:フィガロジャポンBWA事務局
