本稿では『転職に向いていない人がそれでも転職に成功する思考法』(川野智己/東洋経済新報社)を基に、Want・Can・Mustの3つの視点から、後悔しないキャリア選択のためのコンパスを見つけていきましょう。

自分の人生を歩むためのコンパス ─ 「Want・Can・Must」で自分軸を定める

転職で後悔しないためには、転職先を決めるにあたり、誰の意見でもない、あなた自身の「自分軸」を明確に定める必要があります。この自分軸こそが、無数の選択肢の中から本当に進むべき道を示してくれる、信頼できるコンパスとなるのです。

では、どうすれば自分軸を見つけられるのでしょうか。あなたのキャリアを考える上で、以下の3つの要素から、今後の進むべき道筋を明らかにしていきましょう。

Want(心からやりたいこと、好きなこと)
あなたが情熱を注げること、時間を忘れて没頭できることは何ですか?

Can(今のあなたにできること、得意なこと)
これまでの経験や学びを通じて培ってきたスキルや能力、実績は何ですか?

Must(社会や他者から求められること、そして自分が譲れない価値観・こだわり)
あなたが仕事を通じて社会に貢献したいこと、あるいは仕事をする上で「これだけは譲れない」と考える信念や価値観は何ですか?

この3つの要素(Want・Can・Must)が重なり合う領域こそが、あなたが本当に目指すべき仕事、つまりあなたの「適職」と言えるでしょう(図表1)。

  • 図表1:転職すべき仕事の領域 (『転職に向いていない人がそれでも転職に成功する思考法』[川野智己/東洋経済新報社] P.109より抜粋)

    図表1:転職すべき仕事の領域 (『転職に向いていない人がそれでも転職に成功する思考法』[川野智己/東洋経済新報社] P.109より抜粋)

この自分軸を明確にすることは、「内面の整理不足タイプ」の方々、特に「自分をわかりやすく表現できない人」や「転職すべきかどうか決断できない人」にとって、現状を打破するための非常に重要なプロセスです。また、「自己評価がズレているタイプ」の「自分の中の『凄い』が見つけられていない人」にとっては、自身の「Can」を客観的に把握する良い機会となります。

ここで言う「Can(できること)」とは、過去に経験した仕事内容そのものを指しているのではありません。その仕事を通じて培ってきた汎用的な能力や姿勢を指します。これまでの仕事を細かく分解し、要素に分けてみることで、客観的に洗い出すことができます。

たとえば、厚生労働省が提供している職業情報提供サイト「job tag(ジョブタグ)」などを活用すると、自分の職務経験からどのようなスキルや知識が一般的に身につくのかを把握するのに役立ちます。もちろん、そこにあなた独自の経験や取り組みがあれば、それも付け加えていきましょう。

このように、これまでの仕事を具体的な能力レベルまで掘り下げてみることで、一見まったく異なる分野の仕事であっても、同じような能力が求められるのであれば、そこで活躍できる可能性があると判断できるようになります。

また、「Must(志・こだわり)」は、「こうでなければならない」という強い決意を伴う、仕事をする上でのあなたの価値観、信念、そして譲れないポイントを指します。

たとえば「逐一指示命令を受けたり、同じことを繰り返したりする作業は避けたい。自分で考えて主体的に仕事を進めていきたい」という強い信念があれば、それはここで言う「志・こだわり」です。

そのような方は、工場の生産工程管理やルーティンワークの多い経理事務よりも、個人の裁量が大きいコンサルタントのような仕事のほうが向いているかもしれません。

心の奥に眠る「好き」との再会 ─ 〝本当の自分〟が輝き出す瞬間

この「Want・Can・Must」の中でも、私が皆さんに最も意識して掘り起こしていただきたいのが、あなたの中に深く眠り、忘れかけているかもしれない「Want(心からやりたいこと、好きなこと)」です。

Appleの共同創業者の1人であるスティーブ・ジョブズ氏は、「仕事は人生の大部分を占める。満足する唯一の方法は、自分の行っていることが素晴らしい仕事だと思えることだ。そして素晴らしい仕事をする唯一の方法は、自分の好きなことをすることだ」と語りました。

また、ソニーの創業者である井深大氏も「人生でいちばんの幸福は、仕事と趣味が一致することだ」と言っています。

私たちは、大人になる過程で、知らず知らずのうちに多くの夢を心の奥にしまい込んできたのかもしれません。その大きなきっかけの1つが、新卒での就職活動だったのではないでしょうか。

漠然と抱いていた夢や憧れが、限られた情報の中で、ウェブサイトに掲載されている求人企業への就職という、非常に具体的な選択肢へと形を変えてしまった経験を持つ方も少なくないでしょう。

そして就職後も、会社の方針に従って異動を受け入れ、どちらかと言えば受動的にキャリアを積んできた結果、「振り返ってみれば、自分にはこれといった専門性が身についていないのではないか」と漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

これは「内面の整理不足タイプ」の方が、自分自身のキャリアの軸を見失いがちな状況とも言えます。

しかし、今こそ、千載一遇のリベンジのチャンスが訪れているのです。

空前の人手不足と言われる現在の転職市場は、これまで「自分には無理だ」と諦めていた選択肢が、大きく開かれた門としてあなたの目の前に広がっている状況とも言えます。

たとえ未経験の分野であっても、あなたのこれまでの仕事で培った能力が高く評価され、憧れていた職業に就ける可能性があります。
この好機を、みすみす見逃す手はありません。

今こそ、心の奥底にしまい込んでいた「好き」という感情をもう一度ていねいに拾い集め、これから先の仕事に反映させてみませんか。

(記事掲載にあたり本文の一部を修正しています)


出典元:
『転職に向いていない人がそれでも転職に成功する思考法』(川野智己/東洋経済新報社)

転職者2000人を指導、ミスマッチ退職率「44.0%→9.1%」の「転職定着マイスター」が伝授! 「こんなはずじゃなかった」をなくす、「自分らしくいられる職場」の見つけ方。

「適性」と聞くと、変えられないものだと諦めてしまうかもしれません。
しかし、心配はいりません。
本書が、その「適性」を後から身につけるための具体的な方法をお伝えします。