「成功思考」と「失敗思考」
AIで終わる人
失敗すると「恥ずかしい」と落ち込み、歩みを止めてしまう。
AIで化ける人
失敗しても「データが取れた」と喜び、次の仮説へ進める。
「早く失敗、早く成長」
こんな言葉を聞いたらどのように感じますか?
「失敗するなんて嫌だ」「失敗したからって成長するもの? どういうこと?」
そんな疑問をお持ちになるかもしれません。
実はこの言葉は私の会社のバリューの一つです。「Fail&Grow 〜早く失敗、早く成長〜」。「失敗思考」は会社のバリューに込めるくらい大事な思考法だと思っています。では、失敗思考とは何かを解説していければと思います。
「失敗してもお得」な思考法
下の図を見ながら読み解いていきましょう。 何か課題に直面した時に人は「成功」したいと思います。しかしながら、すぐさま直線的に成功にたどり着けるかというと、残念ながらそうではありません。 その成功にたどり着くためにまずは「仮説」を立てます。
「Aという方法を採用すればうまくいくはずだ」として仮説を立てて、実際に試してみます。その結果と仮説とを見比べてみます。試して実行する前はAという方法がうまくいくと思っていたが、仮にうまくいかないとします。失敗です。
ですが、ここで落胆せずに、この「失敗」を「Aがうまくいかなかったという学び」と捉えるとどうでしょう。これは「成長」になります。Aがうまくいかなかった学びから、次にBという仮説を立てます。それで試してみると成功しました。
このように「失敗」を恐れずに「仮説→試す」を実施すると、「成功」か「成長」を得ることができます。とても「お得」な思考法が失敗思考です。「成功」だけを目指して「失敗」を恐れて行動ができなかったとすると、「成功」も「成長」も得られない結果になってしまいます。
AIで失敗のコストはゼロに
この「失敗思考(Fail&Grow)」のサイクル、実はAI時代になってその回転速度が劇的に変わりました。
かつて、アナログの時代や、AI以前の時代において、「試す」ことには大きなコストがかかりました。資料を作るのに3日、試作品を作るのに1か月。そうなると、失敗した時のダメージ(時間的・金銭的損失)が大きいため、どうしても失敗を恐れ、「一発で成功させたい」という「成功思考」にならざるを得ませんでした。
しかし、生成AIの登場でルールは一変しました。AIを使えば、資料のたたき台は3分で、アイデアのパターン出しは10秒で、プロトタイプのコードは瞬時に生成されます。つまり、「試すコスト」が限りなくゼロに近づいたのです。
これまでは1年に1回しかまわせなかった「仮説→試す→失敗→成長」のサイクルを、AIを使えば1日に10回、いや100回まわすことだって可能です。ここで重要になるのが、「成功思考」と「失敗思考」の決定的な差です。
AI時代において、失敗はもはや「恥」でも「損失」でもありません。単なる「データ収集」です。AI自身を見てください。AIは学習過程で何億回ものエラー(失敗)を繰り返しますが、落ち込んだりしません。ただ淡々と「あ、これは違うんですね。では次はこうします」とパラメータを修正し、賢くなっていきます。 私たち人間も同じです。
「AIを使って10個の案を出してみたが、9個はダメだった」
これは9回の失敗ですが、同時に「この9個は違うという貴重なデータ」を、わずかな時間で手に入れたことになります。そして残った1個の精度を高めればいい。かの有名なユニクロ創業者の柳井正さんの著書でも『一勝九敗』というくらい、成功にたどり着くには失敗がつきものなのではないでしょうか。
「早く失敗、早く成長(Fail Fast, Grow Fast)」
このバリューは、AIという加速装置を手に入れた今、ビジネスパーソンにとって最も合理的で、最もリターンが大きい投資戦略なのではないでしょうか。失敗を避けるためにAIを使うのではなく、「より早く、より多く、より安く失敗して、正解へのルートを見つける」ためにAIを使う戦略です。
成功の反対は失敗ではありません。成功の反対は、「何も試さず動かないこと」です。AIを相棒に、恐れずに失敗のサイクルを高速で回し、成長という果実を誰よりも早く手に入れるのはいかがでしょうか。
AIは安全な「実験場」
では、具体的にどうすればこの「失敗思考」を日々の仕事に落とし込めるのでしょうか?
「失敗しろと言われても、実際に上司に怒られるのは怖いし、お客様に迷惑はかけられない」
それが正直な気持ちだと思います。そこで提案したいのが、AIを「安全なサンドバッグ(実験場)」として使う方法です。現実世界で失敗する前に、AIというバーチャルな世界で盛大に失敗しておけばいいのです。具体的な3つのステップをご紹介します。
① AIで「仮想の失敗」を先取りする
新しい企画や提案を考えた時、いきなり上司や顧客に出すのではなく、まずAIにこう聞いてみてください。
「この企画書を、辛口の投資家になったつもりで批判して。失敗するとしたらどんな理由が考えられる?」「このメールを送った時、相手が不快に思うポイントはどこ?」
AIは容赦なく、あなたのアイデアの欠陥(失敗の種)を指摘してくれます。
「ターゲットが曖昧です」「コスト試算が甘すぎます」
これらはすべて「バーチャルな失敗」です。現実で恥をかく前に、AIの中で失敗を経験し、修正しておく。これを繰り返すことで、本番での「致命的な失敗」を回避し、「小さな失敗と修正」のサイクルを高速で回すことができます。
②「30点の勇気」を持つ
失敗を恐れる人は、100点を目指して時間をかけすぎます。恥をかきたくない。これが意外と大きいと思います。AI時代の実践法は、AIを使って3分で「30点のたたき台」を作ることです。30点ですから、当然そのままでは使い物になりません。ある意味、失敗作です。
しかし、それでいいのです。「まずは30点でいいから出して、フィードバックをもらって直す」。このスピード感こそが重要です。
AIで作った30点の案を、自分の手で50点にし、上司に見せて60点にし、未完成であることを許容し、修正の回数で完成度を上げていく。「一発合格」を狙うのをやめ、「修正ありき」で走り出す勇気を持ってください。
③ 失敗を「感情」ではなく「ログ」として処理する
それでも、現実で失敗してしまうことはあります。提案が通らなかったり、ミスをしたり。その時、失敗思考の人は落ち込む時間すらもAI活用に充てます。失敗の経緯や、断られた理由をそのままAIに入力し、「なぜ失敗したのか? 次はどうすれば成功確率が上がるか?」を分析させるのです。
すると、AIは慰める代わりに「提案のタイミングが悪かった可能性があります」「次はA案ではなくB案の切り口でいきましょう」と、次の仮説やネクストアクションを提示してくれます。失敗を「嫌な思い出」として心に残すのではなく、「学習データ」としてAIに保存し、次の糧にするのです。
[次回は、過去の努力をAIで更新し続ける「リセット思考」の考え方を紹介します。]
出典元:
『AIで終わる人 AIで化ける人 「AIが当たり前」の時代を生き抜く20の思考変革』(中平健太/ダイヤモンド社)
「AIが答える時代」から「動く時代」に――「真面目」な人から終わる。自信のある人こそ詰む。AIで1000社3000名超の働き方を変えた起業家が教える、ITの知識は関係ない、自分を爆発的に進化させる考え方!これからAIがどれだけ進化しても変わらない、「AI以後の時代」を生き抜くための4つのルールと20の思考変革
(記事掲載にあたり本文の一部を修正しています)


