「才能のある人」と聞いて、どんな人を思い浮かべますか? 飛び抜けた頭脳の持ち主や、一度見ただけですべて覚えてしまうような人でしょうか。もしそうなら、自分の才能を見つけにくくしているのは、思い描いているイメージ自体かもしれません。『5日で自分の才能が見つかる本』(堀田秀吾/祥伝社)を基に、これまで見過ごしていた自分の素質を改めて見つめてみましょう。

才能を「特殊能力」だと思い込む。自分の才能を見落としてしまうわけ

才能のある人と聞いて、あなたの頭にはどんな顔が浮かぶでしょうか。子どもの頃から飛び抜けて頭が良かった人。教科書を一度読んだだけで全部覚えてしまう人。一発で正解にたどり着く人。こうした「生まれつきの天才」というイメージは、世界中でとても根強く共有されています。じつは、このイメージこそが、自分の才能を見つけにくくしている思い込みの1つなのです。

【世界の才能研究より】

プリンストン大学のレズリーらは、米国の30学術分野の大学教員・ポスドク・大学院生あわせて1820名の研究者に、いくつかの質問を投げかけました。「あなたの分野で成功するには、教えれば誰でも身につくスキルよりも、生まれつきの特別な才能のほうが必要ですか」というものです。そして、その回答と、各分野で女性が博士号を取った比率とを並べて見くらべてみたのです。

結果、「成功には生まれつきの才能が必要」と信じる人が多い分野ほど、女性で博士号を取った人の比率が低かったのです。たとえば、2011年のアメリカでは、分子生物学では女性の博士号取得者比率がおよそ54%。ところが哲学では31%にとどまります。レズリーらは、この傾向を説明する考え方を「分野固有の能力信念仮説」と名づけました。

【分かりやすくいうと】

ここから見えてくるのは、1つの社会現象です。「特殊能力としての才能」というイメージが強い分野では、女性に限らず「自分にはその才能がない」と感じた人が離れていってしまうのです。本当のところ、博士課程に必要な力の多くは、訓練と習慣でちゃんと身につけられます。しかし、「天才イメージ」がその分野の空気として漂っていると、入る前から自分で自分を消してしまう人が、たくさん出てきてしまうのです。

これをあなた自身の才能探しに置き換えてみましょう。「才能とは天才だけの特権だ」という思い込みを持っていると、自分の中にある小さな手応えを「これは才能じゃない、ただ得意なだけ」とつい否定してしまいます。ここで言う才能とは、生まれつきの神秘的な能力のことではありません。「ある領域で、他の人より少しだけ早く、少しだけ深く反応できる素地」のことです。レズリーらの数字は、才能という言葉の意味が変わるだけで、その分野に自分を入れるかどうかの判断が大きく変わってしまうことを教えてくれます。

才能とは動きやすい場所

特殊能力というイメージを持ち続けるかぎり、自分の才能はずっと「まだ見つからないもの」のまま置き去りになります。手放したいのは「才能=特別な人だけの特権」という古い意味のほうです。代わりに 「才能=自分の中で、ほかの領域より少し動きやすい場所」と捉え直してみてください。すると、すでにある自分の素質が、ふっと見えてきます。

哲学分野で女性の比率が31%しかないという低さは、社会の側の問題でもあります。でも同時に、「才能の意味を取り違えたまま放っておくと、本物の素質が埋もれていく」という、構造そのものへの警告でもあるのです。だからどうか、自分の中にある「ほんの少し動きやすい場所」を「才能じゃない」と否定しないでください。その、無理なくスッと動ける感じこそが、才能の最初のサインなのです。

レズリーらの分析をさらに読み込むと、もう1つ大事な発見が見つかります。「成功には生まれつきの才能が必要」と信じる強さと、各分野の女性博士号比率がこの信念と逆向きに動く関係は、その分野の研究者の労働時間の長さでも、大学院入試の選抜の厳しさでも、その分野が「体系的・抽象的に考える力」をどれだけ重視するかでも説明がつかなかったのです。(中略)

思い込みをやめるだけで才能が一気に解放されることがある

この発見は、私たち1人ひとりにとって、とても役に立つ意味を持っています。今いる場所で「自分は向いていない」と感じたとき、本当に力が足りないのか、それともその場所に流れる才能観があなたを締め出しているだけなのか。この2つを分けて考える必要があるということです。前者なら、撤退を決める材料になります。でも後者なら、場所を移すだけで、同じあなたが急に伸び始めることだってあるのです。(中略)

才能の意味を「特殊能力」から「動きやすい場所」へ置き換えるだけで、自分の中でずっと蓋をしていた領域が、一気に解放されることがあります。今日の段階では、まずその古い意味を手放してみましょう。

(記事掲載にあたり本文の一部を修正しています)


出典元:『5日で自分の才能が見つかる本』(堀田秀吾/祥伝社)

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