「好きなことを仕事にしたい」「自分が本当にやりたいことを見つけたい」。そう考えて、キャリアや働き方に悩んだ経験がある人も多いのではないでしょうか。でも実は、いま「好き」と感じていることと、自分が持っている「才能」は、必ずしも一致するとは限りません。
では、好きなことと才能にギャップがあるとき、どう考えればいいのでしょうか。『5日で自分の才能が見つかる本』(堀田秀吾/祥伝社)から、世界の才能研究をヒントに、その答えを探っていきます。
「好きなこと」「やりたいこと」と「才能」のギャップ
もし才能が「好きなこと」と違ったら?
ここでは、多くの人がぶつかる壁を取り上げます。「好きなことを仕事にしましょう」「やりたいことを見つけましょう」という助言は、世の中にあふれています。でも、その「好き」や「やりたい」は、そもそもどこから生まれて、どう変わっていくのでしょうか。
【世界の才能研究より】
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のホフらは、職業興味(Vocational Interests)が時間とともにどう変わるかを調べました。同じ人に対して変化を追いかけ続けた49本の縦断研究、98サンプル、合計2万639名分のデータをまとめて分析する、メタ分析という手法を使っています。職業興味をはかるときには、ホランドのRIASEC枠組みがよく使われます。これは、現実的(Realistic)、研究的(Investigative)、芸術的(Artistic)、社会的(Social)、企業的(Enterprising)、慣習的(Conventional)という6つの興味のタイプに分けるもので、職業適性検査でもおなじみの分類です。
【分かりやすくいうと】
ホフらの分析から分かったことをひとことで言いますね。それは、「興味は生まれつき固定されたものではなく、年齢とともに決まった道筋で変わっていく」ということです。
もう少しくわしく見ていきましょう。思春期の前半、つまり小学校高学年から中学生にかけては、興味スコアの平均がいったん下がります。「これがやりたい」と思える気持ちそのものが弱まる時期があるということです。ところが思春期の後半から若い大人の時期に入ると、興味スコアは上がり始めます。とくに人と関わる芸術的・社会的・企業的な興味は、若い大人の時期に高まります。反対に、慣習的な興味は下がっていきます。研究的な興味と現実的な興味は、わりと変わらずに進んでいきます。
もうひとつ、本書のテーマと深くつながるのが、性別のイメージの変わり方です。「男性は機械、女性は人」といった、よくある職業興味の男女差は、思春期の初めにいちばん大きくなり、そのあと成長していくなかで小さくなっていく、と分かりました。10代の前半に「自分は理系っぽい」「自分は文系っぽい」と思い込んだ進路のイメージは、その後の10年から20年で自然にゆらいでいくのです。
数字でその大きさもつかんでおきましょう。2万639名を49本の研究で追いかけているという規模は、職業興味の研究としてはとびぬけて大きいほうです。1つひとつの縦断研究では「うちのサンプルではこう動いた」という一例にすぎないことも、これだけたくさん集まってくると、「人間という生き物に共通する成長のパターン」として見えてきます。あなた個人の興味がどう変わるかは確率の話ですが、人間全体としての変化の傾向は、動かしがたいデータになっているのです。
今見つかる才能を磨くことで道は開ける
ここから、「好き」と「才能」のギャップにどう向き合えばいいか、2つのヒントが見えてきます。
1つ目です。「今の好き」が「将来の自分にいちばん合うもの」と同じだとはかぎりません。20歳の時点で「人と関わる仕事は向いていない」と感じていても、25歳・30歳の自分は、今とは違う興味の地図を持っている可能性が高いのです。早すぎる決めつけは、自分の将来の選択肢をせばめてしまうおそれがあります。
2つ目です。「やりたいこと」と「才能」が合わないと感じるとき、無理に合わせる必要はありません。むしろ「やりたいことは時間とともに変わる」と考えれば、今手元にある才能(特徴)を磨いておくことが、将来「やりたいこと」が見つかったときの、いちばんの準備になります。たとえば料理の才能を持った人が、30歳で「人前で話すことに興味が湧いた」となったとします。すると、料理研究家としてテレビに出たり、オンライン講座を開いたりという道が開けます。手元の才能と未来の興味は、あとから組み合わさって、思いがけない形で実を結ぶことが多いのです。
好きと才能のギャップは、欠陥ではありません。成長の途中にいる人間に、自然に起きることなのです。ホフらの数字を見ると、そのギャップは焦らずに扱ってよいものだと分かります。今日の「やりたい」ことを未来の自分に押しつけすぎないこと。そして、今の才能を未来のために手入れしておくこと。この2つを書きとめておいてください。
(記事掲載にあたり本文の一部を修正しています)
出典元:『5日で自分の才能が見つかる本』(堀田秀吾/祥伝社)
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