投資をする人が増えたいま、老後を視野にポートフォリオを見直すタイミングにあるのが40代。しかしその基準はたいてい「増えるか、減るか」という軸になりがちだ。
一度立ち止まって暮らしやキャリアを考えるこの年代は、お金の使い道にも変化が出てくる。ものを買うとき、作り手や産地を確かめる。活動を応援したい団体に寄付をする。安さや効率だけでは満たされなくなってきた人もいるだろう。

投資にも、その気づきを生かす道がある。リターンを狙いながら、同時に社会に良い変化をもたらすことを目指す「インパクト投資」という考え方だ。その日本での普及に取り組む、公益財団法人社会変革推進財団(SIIF)の常務理事・工藤七子さんに話を聞いた。


【Point】
・リスクとリターン以外に、「社会に何をもたらしているか」も投資の判断基準になる。
・社会課題の解決を企業が担えば、より早く、大きなインパクトを起こせる可能性も。
・どんな会社にお金を投じるかは、どんな社会になってほしいかの意思表示。

リスクとリターンだけでは、決めない投資。

一般的な投資は多くの場合、どれだけリスクがあり、どれだけリターンが出るかがひとつの判断基準となる。しかしインパクト投資では、そういった観点に加えて「投資によって社会や環境がより良くなるか」を判断の軸として持つ、と工藤さんは話す。

「似た概念として、環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)の3要素を考慮する『ESG投資』というのもあります。ただしこちらは、ESGを取り入れることで投資成果が向上する、という思想に基づいており、社会や環境への配慮はあくまでリターンを上げるための “手段” 。一方の『インパクト投資』は、社会や環境の課題解決そのものが “目的”。財務的なリターンと社会・環境への良い効果、両方を追求する点が特徴です」

課題の数だけ広がる、インパクト投資の可能性。

インパクト投資が登場した背景には、深刻化する社会課題・環境課題の存在がある。

「もっとも深刻さを増しているのは気候変動です。もはや政府が何とかする問題ではなくなり、企業も一緒になって経済活動を見直していかないと地球が成り立たない、という危機感が高まっています」

自由に経済活動を行った結果、そこから生じた課題は政府や非営利セクターが解決を担う、というこれまでの役割分担では追いつかなくなっている、と工藤さんは指摘する。そうして解かれないまま社会に残される無数の課題の数だけ、投資先も広がっている。

不足する介護人材のマッチング・サービス。製造過程のCO2を大幅削減する機器の開発。ごみの廃棄を減らすサーキュラーエコノミー型事業。教育や農業、地域活性化に取り組む企業もある。

「SIIFが早い段階から投資してきたのが、障害のある作家のアート作品をIPビジネスとしてライセンス化し、企業と共創 して多様なプロダクトを展開する『ヘラルボニー』です。障害者の作品としてではなく、デザインやアートとしての純粋な魅力を全面に打ち出し、市場競争の中に持ち込みました」

社会課題をビジネス領域に持ち込むことで、より多くの人にアクセスし、スピーディな解決を図ることができるのだ。

一方で、鋭く課題の一点を突く「インパクト・スタートアップ」と呼ばれる企業が増えるだけでは、社会の仕組みまでは変わらない。既存の大企業の変容を支えることもインパクト投資における重要な視点だ。

「たとえば『丸井グループ』は、自分たちが社会にもたらすインパクトとは何か、という視点に立ち返り、若い世代を応援する理念を掲げると同時に、アパレル産業が生む負の影響を減らすことに取り組んでいます。その内容を『IMPACT BOOK』という冊子にまとめて公開しているんです」