共働き世帯が増え、児童のいる世帯では核家族世帯が大半を占める現在、夫婦を中心に育児を担う家庭も少なくありません。
祖父母の手を借りにくい家庭では、0歳育児の夜間授乳などによって睡眠が細切れになりがちです。授乳や睡眠の記録を取りたいと思ったとしても、それを夫婦で共有するだけでひと仕事です。
そんな家庭を助ける選択肢として広がりつつあるのが、見守りカメラや育児記録アプリといった「ベビーテック」です。
IT系ライターであり、教育業界で4年間働いてきた筆者が、統計データと0〜1歳の子を育てる家庭へのヒアリングから、ベビーテック活用の現在地をまとめます。
0歳児を育てる保護者111人への調査では、「約3時間」が最多
0歳児を育てる家庭には、どんな苦労があるのでしょうか。
代表的な課題の一つは、睡眠です。ベビーシッターサービスのキッズラインが2022年に0歳児を育てる会員111名に行ったアンケート※では、「まとまって寝られる睡眠時間」の最多回答は「約3時間」で25.2%。次いで「約4時間」が20.7%でした。「1〜2時間」「まとまった睡眠が取れていない」も合わせて17.1%に上ります。
※「寝不足で限界…」0歳育児中のママの睡眠時間は?何がつらい?|キッズライン
さらに、産前産後には、物忘れや集中しづらさなど、いわゆる「マミーブレイン」を自覚する人もいます。そうした時期にも「いつ授乳したか」「いつ寝たか」を記録しておきたい場面があります。産後の健診では授乳の間隔を聞かれることもあり、記録して報告すること自体が大変だという声も聞きます。
総務省「令和3年社会生活基本調査」によると、一昔前に比べれば父親の育児時間は増えているとの調査結果もでていますし、家庭によっては、両親で協力して育児を担うことで負担を軽減できているケースも見られます。一方で、2人で分担するからこそ、こうした情報を共有する手間が生まれ、そのやり取り自体が負荷になることもあります。
見守り、記録、相談……育児を支えるテクノロジー「ベビーテック」
育児の負担を軽減する手段として、近年「ベビーテック」と呼ばれるテクノロジー群が注目を集めています。
「ベビーテック」は、BabyとTechnologyを組み合わせた造語であり、ベビーテック企業のひとつであるパパスマイルによれば「妊娠妊活、出産、乳幼児の子育てを支援するスマートデバイスやITサービス」と定義されています。
2016年に米国の家電見本市CES(Consumer Electronics Show)で「The Bump Best of Baby Tech Awards」が開催され、一つのジャンルとして注目されるようになりました。日本では2019年に「BabyTech Award Japan 2019」(株式会社パパスマイル主催)が開催され、その後、認知が広がってきました。
一口にベビーテックといっても妊娠期に使うものから育児中用のものまでさまざまですが、0歳育児の家庭では、例えば次のようなツールが活用されています。
育児記録アプリ
授乳・睡眠・おむつ替えなどをスマホで記録できるアプリ。家族とリアルタイムで記録を共有できるものもある
見守りカメラ(ベビーモニター)
別室で寝ている赤ちゃんの映像と音声を、手元のモニターやスマホで確認できる機器
体動センサー
布団やマットレスの下に敷いたり、赤ちゃんの体に着けたりして、呼吸に伴う体の動きなどを検知し、一定時間動きが確認できない場合にアラームで知らせる機器。
※製品によって機能や医療機器としての位置づけは異なります。こうした体動センサーはSIDS(乳幼児突然死症候群)の予防や睡眠障害などの診断・評価を目的とするものではなく、センサーの情報だけで乳児の状態を判断せず、保護者等が確認する必要があります。
電動搾乳器
母乳を電動で搾る機器。手搾りより短時間で負担軽減につながる場合があり、搾った母乳の冷蔵・冷凍も可能
オンライン育児・医療相談
アプリやチャットで小児科医や助産師などに相談できるサービス。夜間や休診日などの突発的な相談に対応するものもある
このほか、授乳前後の体重差から飲んだ母乳量の目安を確認できるベビースケールや、自動で揺れる電動バウンサー、スマホと連動する体温計など、育児のさまざまな場面に対応した製品が出ています。
ベビーテック企業にはスタートアップもある一方で、2026年2月13日に結果が発表された「BabyTech Awards 2025-26」では、パナソニックやシャープ、コクヨといった大手企業も受賞しています。少子化が進むなかでも大手企業の参入が見られ、ベビーテックを手がける企業の広がりがうかがえます。
「パートナーとの連携がラク」「安心して眠れる」……使用経験者に聞いたリアルな感想
ベビーテックは家庭での育児をどう変えるのでしょうか。筆者が0〜1歳の子どもを育てる家庭から個別に聞いた体験談を紹介します。
※以下はあくまで個々の家庭の使用例・感想であり、すべての家庭で同様の効果や使い勝手が得られることを示すものではありません。
▼見守り
「息をしているか心配になってしまうけど、体動センサーがあるおかげで安心して眠れる」
「泣き声がしてもすぐ部屋に行かず、カメラで『再び寝入れたか』を本人の邪魔をせずに見守れる」
▼記録・共有
「夫と共有して、ワンオペ中の参考にしてもらった」
「産後で頭が働かない中、2週間健診で聞かれる授乳や排泄の間隔を手軽に記録できた。タイマー付きで授乳時間を自分で計らなくていい」
▼医療相談
「夜に症状が心配になったとき、病院に行くべきかをサクッと見てもらえて助かった」
▼授乳
「退院してすぐ胸が張り、手で搾るのも痛いなかで、搾乳器に助けられた。夜も長く眠れた」
「ベビースケールで授乳量がわかり、泣いているのは空腹のためか、眠いのかなど推測できるようになった」
一方で、なかには「期待どおりにいかなかった」「購入するほどではないと感じた」という声もあります。
「記録アプリを入れたけど、夫があまりアプリを見ない人だから共有がうまくいかなかった」
「細かい記録が面倒になり、生後1か月ほどでやめた」
「電動バウンサーは途中で効かなくなった。場所も取るので、レンタルにして良かった」
家庭や時期によっては合わないこともあるため、使う期間が短いものはレンタルを検討するのも一つの選択肢です。
気になる費用は? 費用負担を考える際に知っておきたい支援給付
記録や見守りなど、さまざまな面で育児を助けてくれるベビーテックですが、費用はどれくらいかかるのでしょうか。
メーカー公式サイトやECサイトで販売価格を調べたところ、ツール別の価格はおおむね次のとおりでした(2026年9月時点、筆者調べ)。
| 種類
|
価格の目安
|
|---|---|
| 育児記録アプリ
|
無料~月額数百円程度 |
| 見守りカメラ・ベビーモニター
|
汎用Wi-Fiカメラ4,000〜6,000円/専用モニター付き1.5〜2.5万円/AI検知付き4.5万円前後 |
| 体動センサー
|
家庭用の一般医療機器では3万円前後の製品例あり |
| 電動搾乳器
|
6,000円〜3万円 |
| 電動バウンサー
|
5万円前後の製品例あり |
高機能なものは数万円以上するものが多く、何かと出費の多い0歳児期の家庭にとって、気軽に手を出せる金額ではないでしょう。
例えば、購入品とレンタル品を組み合わせた一例として、次のような予算の組み方も考えられます。
- 記録アプリ(0円)
- 見守りカメラ(1万円)
- 電動搾乳器(1.5万円)
- 体動センサーと電動バウンサーのレンタル(2.5万円/半年、製品・サービスの一例)
合計:約5万円
ここで考慮に入れたいのが、2025年4月から法律に基づく制度として実施されている国の「妊婦のための支援給付」です。妊婦給付認定後に5万円、妊娠しているこどもの人数の届出後に「こどもの人数×5万円」が給付されます。単胎妊娠の場合は2回の給付を合わせて計10万円となるため、上記の試算はその金額の範囲に収まります。
もちろん、この給付はベビーテックの購入を目的とした制度ではありません。そのうえで、出産・育児期の家計全体を考える際には、こうした給付制度も含めて、必要なツールにどこまで費用をかけるか検討するとよいでしょう。
出産前の家庭の目に入る場所で、発信を増やしていく
妊娠中から乳児期の親が情報収集に使っているSNSやネット記事などで、育児系インフルエンサーや企業の発信がもっと増えていけば、これから親になる人の目に入る機会も増えていくでしょう。
また、自治体の出産応援カタログやチラシなどにも載っていけば、SNSやネットで育児情報にあまり触れない層にも自然と届くようになります。
出産前に「こういうものがある」と知っておくだけで、産後に本当に必要なツールに出会いやすくなります。睡眠が細切れになりやすい0歳育児の時期を少しでも楽にする選択肢が、必要な人に届く仕組みが広がっていくことを願っています。
■参考
「寝不足で限界…」0歳育児中のママの睡眠時間は?何がつらい?|キッズライン
BabyTech(ベビーテック)とは|BabyTech.jp
いつでもベビーテックに触れられる、購入できる!「アカチャンホンポ ららぽーと福岡店」のベビーテックコーナーの反響は?|BabyTech.jp
BabyTech Award Japan 2019 結果発表|株式会社パパスマイル(PR TIMES)
BabyTech Awards 2025-26、13部門の大賞・優秀賞が決定|こどもとIT
東京都出産・子育て応援事業~赤ちゃんファースト~|東京都福祉局
デジタル技術等を活用した育児支援サービス(Baby-Tech等)が少子化等に与える効果と課題に関する調査 調査報告書(経済産業省)
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