SDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)の達成期限まで4年余り。国連では来年から、2030年の「その先」の国際目標を巡る議論が始まる。米国が背を向けるなか、日本はルールを「つくる側」に回れるのか。慶應義塾大学の蟹江憲史教授に聞いた。

  • 2030年以降の新たな国際目標をめぐる議論が始まろうとしている。国際協調が揺らぐなか、日本はどのような役割を果たせるのか

    2030年以降の新たな国際目標をめぐる議論が始まろうとしている。国際協調が揺らぐなか、日本はどのような役割を果たせるのか。4kclips -shutterstock-

──2030年の達成期限が近づく一方、SDGsの進捗には遅れも指摘されています。SDGsの10年余りを、どう評価されていますか。

枠組み自体はすごく有効だと考えています。「目標を定め、進捗を可視化し、制度をつくって進めていく」というアプローチが浸透したことで、SDGsがなければ起こらなかった変化が起きています。たとえば、今まで「ジェンダー」「貧困」といった独立したテーマで活動していた人たちが、より広いコミュニティから支援を受けたり、連携できるようになりました。

ただし、実質的なインパクトについては、全分野で進捗しているとは言えません。SDGsの概念を浸透させる数年の助走期間を経て、いよいよこれから、というときにパンデミックが起きて、戦争も始まり、あちこちで分断が起きてしまった影響が大きいと感じます。それでも進捗している分野があることは、評価できると思っています。

SDGsの目標は、外から降ってきたものだと考えている人が多いかもしれないですけど、実は、みんなで作り上げていったものなんです。これだけ普遍的で、幅広い課題を対象とする目標についてコンセンサスを得られたのは、歴史上初めてのことで、その意義は大きいという評価がいろいろなところで行われています。こうした経験や現状をふまえて、これから先どうやっていくかが重要です。

  • 蟹江憲史

──日本ではSDGsが広く認知される一方、「SDGs疲れ」という言葉も聞かれます。企業の取り組みも広がっていますが、この状況をどうご覧になりますか。

日本がやってきたことで一番大きいのは、教育へのインパクトだと思います。小さい子までSDGsを知っているのは素晴らしいことです。

企業は差が出てきていますね。むしろ中小企業の方がよくやっている印象です。社長が「やるぞ」と言えば全体が動き出すし、工夫にも長けている。大企業は、一部の部門では取り組んでいるけれど、経営全体ではなかなか進まず、開示に追われています。SDGsを実践している「ふり」をするという「ウォッシュ」の問題も取りざたされています。社内浸透が今後の大きな課題だと思います。