ホルムズ海峡の封鎖を機に、世界は石油依存からの脱却へ動き始めた。中国やパキスタンが再エネ大国へと姿を変えるなか、日本はどこに向かうべきか。経済評論家の加谷珪一氏に聞いた。
──ホルムズ海峡の封鎖から数カ月が経ちました。今、世界のエネルギー情勢はどんな局面にあるとお考えですか。
日本はのんびり構えていますが、世界の認識はもっと深刻ですよ。危機的であると同時に、世界の産業構造がガラッと変わる、パラダイムシフトの序章にあると思います。
戦後80年間、ホルムズ海峡は「ここだけは戦場にしない」という暗黙の了解のもとにありました。世界の貿易もサプライチェーンも、その前提で動いていたんです。ところが、そのパンドラの箱を開けてしまった。
今後、完全な和平が成立しても、これまでのような自由航行はもう戻らないというのが世界のコンセンサスです。将来、また同様のことが起きるリスクを、排除できなくなりました。だから企業も投資家も、石油だけに依存しないシステムへ動き始めています。この変化は不可逆的です。
──1973年にも、中東戦争をきっかけとしたオイルショックで大混乱が起きました。今回とは何が違うのでしょうか。
あの時はアメリカが上手く立ち回ったんです。当時の安全保障補佐官だったキッシンジャーが、サウジアラビアと交渉をしました。
「原油の値上がりは認める。代わりに、以降すべての原油決済をドル建てにし、その代金は必ずアメリカに再投資する」。こんな仕組みを作ったんですよ。結果として、ドルは石油を後ろ盾にして強くなり、「石油の世紀」という世界構造は変わりませんでした。
ところが今回は、その構造自体が揺らいでいる。蓄電池のコストはこの10年で約7分の1になりましたし、数年内に10分の1 以下となるでしょう。太陽光の発電効率もびっくりするくらい上がっています。かつてのオイルショックは、嵐が過ぎれば元に戻りました。今回は、石油への依存という、戻る選択肢そのものが消えつつあるんです。

