法定雇用率の2.7%への引き上げやAI・RPA(業務自動化ツール)の普及など、企業を取り巻く環境は変化している。そうしたなか、障がいのある従業員に「どの仕事を担ってもらうか」は、人事担当者だけでなく配属先の管理職や現場担当者にとっても身近な課題になりつつある。採用人数の確保だけでなく、力を発揮できる業務をどう用意するかが問われている。
Works Human Intelligence(WHI)が国内大手76法人80名の人事担当者を対象に行った調査では、職域の確保・拡大を難しいと感じる企業が約6割に上った。企業の人事担当者や受け入れ現場にとって、業務設計の実態を知る手がかりとなる調査である。
約6割が職域確保・拡大を難しいと回答
WHIは、統合人事システム「COMPANY」を利用する国内大手の人事担当者を対象に、障がい者雇用の実務運用に関する調査を実施した。調査期間は2026年4月15日~5月29日、有効回答数は76法人80名である。
法定雇用率の引き上げやAI・RPAの普及などを踏まえ、障がい者雇用における職域の確保・拡大について尋ねたところ、「非常に難しくなっていると感じる」が41.3%、「やや難しくなっていると感じる」が18.8%だった。合わせて約6割が難しさを感じている。
障がい者雇用では「定型業務」が中心
障がいのある従業員が担う業務のうち、定型業務の割合については、「8割以上」が61.8%、「6割以上〜8割未満」が23.7%だった。
具体的な業務としては、「事務補助」「データ入力」「書類スキャン」などが多く挙げられ、オフィスでのサポート業務が中心となっている。
一方、AI・RPAの活用が障がいのある従業員の業務に与えた影響を尋ねると、「影響はない」が56.6%、「あまり影響はない」が26.3%だった。両者を合わせると8割を超え、現時点での影響は限定的となっている。
最大の課題は「業務の創出(切り出し)」61.3%
現在の障がい者雇用における課題では、「業務の創出(切り出し)」が61.3%で最多だった。次いで「現場理解」が48.8%、「定着支援(フォロー・サポート体制)」が45.0%、「業務のマッチング」が35.0%と続いた。
職域そのものを増やすことに加え、受け入れる現場の理解や、従業員と業務をどう結び付けるかも課題となっていることがわかる。
業務の割り当ては配属先主導が65.8%
創出した業務を従業員にどのように割り当てているかについては、「配属先の部署・担当者が主導して業務を割り当てている」が65.8%で最多だった。
一方、「人事/支援担当者/配属先の担当者が、本人の特性・スキルを踏まえて業務を調整している」は9.2%にとどまった。
調査では、約6割の企業が職域確保に課題を感じる一方、本人の特性やスキルを踏まえた業務調整は1割程度となっており、業務の創出と人材とのマッチングの両面に課題があるとしている。
今後強化したいのは現場業務とサポート業務
AI・RPAの活用が進む中、今後、障がいのある従業員が担う業務として最も強化したいものを尋ねたところ、「清掃・軽作業・物流などの現場業務」が36.3%で最多だった。
次いで「サポート業務(庶務・アシスタント・バックオフィスなど)」が30.0%となった。調査では、多くの企業が新たな職域を開拓するよりも、まず既存業務の中で活躍機会を広げようとしていることがわかった。
本人の特性や希望を踏まえた業務設計へ
WHI総研の角川亜由美氏は今回の調査について、職域確保には業務内容の整理だけでなく、本人の強みや希望、必要な配慮を把握し、受け入れ側の従業員や管理職と共有することが重要だと解説している。
実際に職域設計を工夫している企業では、選考段階のインターンシップや事前面談を通じて、本人のキャリア志向や必要な配慮を確認する取り組みもみられるという。
人事と現場が対話しながら、「どのような業務があり、誰がその業務で力を発揮できるのか」を結び付けて役割を設計することが、今後の職域確保の一つのポイントとして示されている。
職域設計を見直す材料に
障がい者雇用をめぐる制度と職場の実態を考える際は、雇用率だけでなく、本人の特性や希望、必要な配慮を踏まえた業務設計や受け入れ体制にも目を向けたい。今回の調査は、その現状を知る材料の一つとなる。
調査概要
調査名:障がい者雇用の実務運用に関する調査 ― AI時代の職域と業務設計の実態 ― 期間:2026年4月15日~5月29日 調査機関:自社調べ 対象:「COMPANY」ユーザーである国内大手の人事担当者 調査方法:インターネットを利用したアンケート調査 有効回答数:76法人80名 出典:Works Human Intelligence 調べ
※グラフの内訳は小数点第1位まで表示しているため、端数処理の関係で内訳の和が100%にならない場合がある。





