世界で開発競争が加速する「人型ロボット」。工場などで実用化に向けた動きが進むなか、日本の深刻な労働力不足を補う存在になり得るのか、その可能性と課題を探る。

  • 工場や倉庫での活用が期待される人型ロボット。労働力不足を補う存在として実用化に向けた開発が進んでいる

    工場や倉庫での活用が期待される人型ロボット。労働力不足を補う存在として実用化に向けた開発が進んでいる IM Imagery -shutterstock-

2026年3月、米ホワイトハウスで行われたイベントで、メラニア・トランプ米大統領夫人の隣を歩いたのは、人間ではなく「人型ロボット(ヒューマノイド)」だった。米ロボット開発企業フィギュアAIの「Figure 03(フィギュア ゼロスリー)」が来場者に11カ国語で挨拶し、AIと教育について語る姿は、人型ロボットが研究開発の世界から、より身近な存在へと近づきつつあることを印象づけた。

周囲の状況を認識し、それに応じて動作を変える「フィジカルAI」の実用化に向けた動きが活発になっている。その中でも、人間と同じような二足歩行と腕・手を持つ人型ロボットには、世界各国の企業が相次いで参入している。

人型ロボットの開発・実用化は現在どこまで進んでいるのか。そして、人型ロボットは日本の深刻な労働力不足をどこまで補えるのか。

工場で始まった人型ロボットの実用化

従来の産業用ロボットは、自動車の溶接や部品の搬送など、特定の作業を高速かつ正確に繰り返すことを得意としてきた。一方、人型ロボットは、人間のために設計された工場や倉庫で働き、人間が使う通路や道具をそのまま利用できるという利点が期待されている。既存の設備や作業環境を大きく変更せず、人間が担ってきた複数の作業に対応できることが、人型であることの大きな強みだ。

代表格の一つが、米テスラの「Optimus(オプティマス)」だ。テスラは、工場や家庭などでさまざまな作業を担う汎用型の二足歩行ロボットの実現を目指している。

米スタートアップ企業のフィギュアAIは、すでに工場での実証を進めている。同社によると、独BMWの米サウスカロライナ州スパータンバーグ工場では、2025年に「Figure 02(フィギュア ゼロツー)」が実際の生産ラインで稼働し、9万点を超える部品を扱い、3万台を超えるBMW X3の生産工程に携わったという。同社によると、2026年には冒頭で紹介した後継機の「Figure 03」が同工場で稼働し、板金部品を取り出して配置する作業から、複数の部品から必要なものを選別し、組み立てラインに供給する「シーケンシング」へと用途を広げている。

独メルセデス・ベンツも、米アプトロニックの「Apollo(アポロ)」を製造拠点で試験するなど、自動車産業を中心に実用化を見据えた取り組みが広がっている。