AIブームの一方で、米巨大テック企業は電力確保という新たな課題に直面している。原子力発電所との契約や小型モジュール炉(SMR)への投資が加速する。

  • 生成AIを支えるデータセンターでは、大量の電力の安定確保が新たな課題となっている

    生成AIを支えるデータセンターでは、大量の電力の安定確保が新たな課題となっている。 Gorodenkoff -shutterstock-

生成AIの進化が急速に進むなか、米国のIT業界はいま巨大な「ボトルネック」に直面している。それが爆発的な電力需要の急増に伴う電力供給不足である。

これまでデジタル領域の技術革新をけん引してきた巨大テック企業は、AIインフラを支えるデータセンターの稼働に必要な大規模な電力の確保をめぐり、エネルギー市場で激しい争奪戦を繰り広げている。

AI時代の新たな競争軸「電力」

生成AIのモデル学習や推論処理には、膨大な処理能力が必要となる。それに伴い、データセンターの消費電力も爆発的に増加している。

国際エネルギー機関(IEA)の分析によると、世界全体のデータセンター、AI、暗号資産による電力消費量は、2026年には日本の年間電力消費量にほぼ匹敵する1,000テラワット時超に達する可能性がある。

米国市場においても、ゴールドマンサックスの予測では、米国データセンターの電力需要は2025年の31ギガワットから2027年には66ギガワットと2倍以上になり、今後1~2年間に計画されている電力需要のうち、予定通り電力供給が実現するのは50~60%程度にとどまるとされている。

AI需要の急増は、巨大テック企業が長年進めてきた「脱炭素と安定供給」を両立させるための再生可能エネルギー調達のあり方にも大きな変容を迫っている。

相次ぐ既存原発の再稼働と直接契約

従来、巨大テック企業は年間消費量と同等の再エネ電力を証書や電力購入契約で調達することで「100%再エネ達成」を掲げてきた。しかし、太陽光や風力など出力が変動する再生可能エネルギーだけで、24時間365日の電力需要と発電量を常時一致させることは難しい。

とりわけグーグルは、2030年までに事業を展開するすべての地域で、消費電力を毎時間、無炭素電源と一致させる「24/7カーボンフリー・エネルギー(24/7 CFE)」を目標に掲げている。マイクロソフトなど他の巨大テック企業も、再エネ調達の拡大に加え、原子力を含む安定した脱炭素電源の確保を進めている。

具体的には、次世代地熱発電など気候に左右されないクリーン電力への投資、そして蓄電池や原発とのハイブリッド調達による出力の平滑化である。こうした課題への有力な解決策として、巨大テック企業が相次いで注目しているのが、原子力発電所との長期の電力購入契約や、既存原発の再稼働である。