経済分断が招く「破滅のループ」
Financial Timesのインタビューで、IMF(国際通貨基金)のチーフエコノミスト、ピエール・オリヴィエ・グランシャ氏は、報復の応酬による経済分断に警鐘を鳴らす。
「『目には目を』の貿易戦争は世界経済を脅かしている。ある国が重要鉱物を囲い込めば、他の国々はそれを回避する新たなサプライチェーンを構築するだけだ」
規制を強化するほど企業は新たな調達ルートや生産拠点を模索し、結果として世界の供給網はさらに入り組んでいく。企業には、生産拠点を移すだけでなく、その先のサプライヤーの資本関係や原材料の調達先まで遡り、サプライチェーン全体を可視化することが求められている。
さらに分断は、モノだけでなく資本にも及んでいる。AIや先端半導体への投資競争が激化する一方、投資マネーそのものも政治によって左右されるようになった。
コーネル大学のエスワール・プラサド教授(元IMF中国部門長)は、経済、国内政治、地政学が互いに混迷を深める現在の状況を「破滅のループ(Doom Loop)」と呼ぶ。また、中堅国は米中対立の中で難しい選択を迫られ、それが国際経済秩序の分断を加速させていると指摘している。
企業が直面しているのは、一時的なサプライチェーンの再編ではない。モノ、技術、資本、人材の流れを含めた世界経済全体の構造変化なのである。
