(このインタビューは2026年7月29日に行われました)
宇宙関連株はなぜ注目? どんな事業がある?
“宇宙”と聞くと、ロケット開発や宇宙旅行を思い浮かべる人は少なくないでしょう。
しかし齊木さんは、実際の宇宙ビジネスは裾野が広く、収益構造も事業によって異なると指摘します。「宇宙関連の事業は多様化しているため、大きく3つの分野に分けて捉えると理解しやすいでしょう」
齊木さんによると、3つの分野とは次のとおりです。
【宇宙ビジネスの主な分野】
・ロケット開発:人工衛星や探査機などを宇宙に運ぶためのロケット開発・打ち上げ
・衛星サービス(通信・地球観測など):インターネット接続サービスの提供や人工衛星によるデータ観測など
・新領域・軌道上サービス:民間宇宙旅行、月面・惑星資源開発、スペースデブリ(宇宙ごみ)の除去など
上記のうち、現時点で商業化が進んでいる分野の一つが衛星サービスだと、齊木さんは話します。代表例がスペースXの「スターリンク」で、低軌道を周回する小型衛星群によって高速のインターネットサービスを提供しており、山間部や離島など、通信インフラが未整備の地域でも高速通信が可能です。
一方で、ロケットの開発や打ち上げには莫大な費用がかかります。齊木さんは、「民間宇宙旅行や月面・惑星資源開発などについても、本格的な事業化・収益化にはなお時間を要する分野がある」と言います。
「ひと口に宇宙関連株といっても、現時点では稼げる分野と先行投資段階の分野とで二極化している状況です。収益化が進む分野が主力事業の企業であれば比較的業績を見通しやすい一方、次世代ロケット開発や宇宙資源開発がメインの企業だと、投資資金の回収にはまだまだ時間がかかるでしょう」
スペースXが宇宙株関連ブームをけん引する理由
宇宙関連銘柄への関心が一気に高まった背景には、民間宇宙開発におけるリーディングカンパニー、スペースXの存在があります。同社は2026年6月に米国ナスダック市場に上場し、上場初日の終値ベースの時価総額は約2.1兆ドルに達しました。同社のIPO(新規株式公開)は史上最大級の規模となりました。
齊木さんは、スペースXがここまで高く評価される理由について「宇宙・衛星通信からAIまで幅広い事業を垂直統合する総合力にある」と話します。スペースXはロケットの製造・打ち上げから人工衛星によるネットサービスの提供、さらにはAI向け計算基盤やAIモデル「Grok」、情報プラットフォーム「X」などを含むAI事業、将来的な月面や他惑星への人間・物資移送を目的とした大型宇宙船システムまで、宇宙からAIに関するビジネスを一気通貫で行っています。
「このような企業は現時点で他にありません。実際にスペースXの開示によると、同社は2023年以降、毎年、世界全体の軌道投入質量の80%超を打ち上げています。さらに、2026年3月末時点で、スターリンク衛星は、軌道上で稼働中の操縦可能な全衛星の約75%を占めています」
2026年4~6月期は5.41億ドルの最終赤字でした。前年同期のおよそ10億ドルの最終赤字から大幅改善したことで、今後の黒字化への期待が意識されます。一方、スターリンクを中心とする通信部門は16.56億ドルの営業利益を計上し、安定した収益源によってロケットやAI事業への投資が進んでいます。また、従前は使い捨てが当たり前だったロケットの再利用化にも成功しており、コストを大幅に引き下げることで業績全体の収益化を後押ししています(※)。
※2026年4~6月期の決算数値は、取材後の2026年8月4日(米国時間、日本時間8月5日)に公表されたスペースXの四半期報告書をもとに、編集部が追記。
「業界シェアや収益構造によって将来的に成長していけるストーリーが描かれているため、投資家も期待しているのでしょう。個人的にも、宇宙関連株といえば期待先行の夢物語だったところから、ビジネスとして成り立つかもしれないと思える段階まで引き上げた点は大きな魅力だと感じています」
続けて、齊木さんは「スペースXは宇宙産業の中核的な存在なので、同社の株価が業界全体の値動きにも影響を与える可能性がある点は要注意です」と話します。他の宇宙関連株に投資する場合も、まずスペースXの動向を見ておくと業界全体の流れが把握しやすいでしょう。
宇宙関連株は「事業」と「決算」で選ぶ
宇宙関連企業は今後も成長が期待されますが、すべての企業が同じように業績を伸ばせるとは限りません。齊木さんは、「宇宙というテーマだけで投資先を選ぶのではなく、どの事業で利益を生み、その利益はどう伸びているのかを確認する必要がある」と指摘します。
現時点で収益化が進んでいる事業の代表例が衛星通信です。スペースXのスターリンクはその筆頭格です。このほか、イリジウムコミュニケーションズも黒字化を達成しています。なお、ロケット打ち上げでスペースXと競合するロケットラボがイリジウムの買収で合意している点も注目されます。
また、宇宙関連株には防衛大手企業が含まれることもあります。宇宙専業企業のように高い成長性を狙う投資とは異なりますが、比較的長期の政府契約を収益基盤に持つ企業が、宇宙分野にも事業を拡大している点が特徴です。
ロケット開発・打ち上げなどの分野では、関連企業による積極的な投資が続いている状況ですが、AIインフラやAIを活用した宇宙データの解析など、新たな収益源になり得る事業もあります。
こうしたAI事業について、齊木さんは「ロケット事業よりも収益化の実現が早いのでは」と見ています。「収益化が実現すれば全体の業績アップを期待できます。現時点では赤字でも、近い将来に収益源になり得る事業があれば企業の将来性を測るうえで重要な材料になるでしょう」と続けます。
では、事業の収益性はどうやって判断すればよいのでしょうか。齊木さんは「決算時に公表される営業利益とEPS(一株当たり純利益)、キャッシュフローの推移を確認してほしい」と言います。
売上が伸びていても、研究開発費などが膨らめば利益は残りません。宇宙関連企業は先行投資負担が大きいケースもあり、売上が伸びている=順調とは限らないのです。そのため、本業でどれだけ利益を稼げているのかを示す営業利益と、1株当たりの利益水準を示すEPSに加えて、キャッシュフローの確認が重要です。
「四半期ごとの決算で、前年同期比で営業利益やEPS、キャッシュフローが改善しているかどうかを見てください。まだ赤字の企業であれば、赤字が減少しているかを確認します。さらに、会社が発表した業績や今後の見通しが、アナリストや投資家の出す市場予想(マーケットコンセンサス)を上回っていれば、市場の期待値は一気に高まる可能性があります」
【決算でまず見るべきポイントは2つ】
・前年同期と比べて「営業利益」「EPS」は伸びているか。キャッシュフローも併せて確認します
・決算実績や会社側の業績見通しが「市場予想」を上回っているか
「この2つは宇宙関連株や米国株に限らず、グローバル市場において多くの投資家が重視するポイントです。日本の宇宙関連株を確認する際も、基本的な見方は同じです」
決算が好調にもかかわらず株価が下がるなど、時として株式市場では予想できない値動きになることもあります。齊木さんは、こうした局面での見方について、次のように話します。
「決算が好調で成長性が高く、ビジネスモデルがしっかりした企業であれば、一時的に株価が下落しても、いずれ株価は正当な評価が反映されて回復する可能性があります。好決算にもかかわらず株価が低迷するような時は、業績見通しやキャッシュフロー、バリュエーションなど下落理由を確認する必要があります。株価下落だけで判断せずに、中身もチェックすることが大事です」
宇宙関連株は資産形成のサテライト
宇宙産業は長期的な成長が期待されるテーマですが、資産形成ではどのように位置付ければよいのでしょうか。齊木さんは、「宇宙関連株を資産形成の中心に据える必要はあまりない」と話します。
「ポートフォリオは広く分散されたインデックスファンドなどをコアに据え、個別の宇宙関連株はサテライトとして限定的に組み入れた方が良いと思います。将来有望だからといって、一つのテーマだけに資産を集中させるのはおすすめできません」
宇宙関連産業は今後も市場の拡大が期待されますが、その成長スピードは企業によってさまざまです。収益化が進む事業もあれば、長期的な投資が続く事業もあるため、「宇宙関連株」という一つのテーマではなく、その企業がどの事業で利益を生み、どのステージにいるのかを見極めることが重要です。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を勧誘・推奨するものではありません。投資は元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いします。



