物価高や人手不足を背景に賃上げへの要請が高まる一方、売上が伸びなければ人件費の増加が経営を圧迫する。厚生労働省が2026年7月28日に示した地域別最低賃金額改定の目安は、全国加重平均で55円、4.9%の引き上げだった。その後、9月3日に同省がまとめた地方最低賃金審議会の答申では、全国加重平均は1,177円、昨年度から56円の引き上げとなった。

フォーバル GDXリサーチ研究所は全国の中小企業経営者1,653人を調査し、賃上げの実施状況や理由、原資、効果、経営負担を尋ねた。賃上げを一度実施できるかだけでなく、継続できる収益をどう確保するかという中小企業の課題がみえる。

賃上げ実施は63.3%、未実施理由は「売上や利益が伸びていないため」が最多

今回の回答者1,653人では、「2025年1月以降から実施している」が21.0%、「2025年1月以前から実施している」が42.3%で、合わせて63.3%が賃上げを実施していた。「実施していない」は36.7%だった。

前回調査の回答者1,464人では賃上げ実施が66.3%だったため、今回調査では3.0ポイント低下したものの、6割超が賃上げを実施している。

賃上げを実施していない企業の回答者607人に理由を複数回答で聞いたところ、「売上や利益が伸びていないため」が39.7%で最多だった。「賃上げの必要性を感じていないため」が23.1%、「人件費の増加が経営を圧迫するため」が19.9%と続いた。

賃上げ理由は「従業員の定着率や満足度を高めるため」が73.9%

賃上げを実施した企業の回答者1,046人に、実施理由を複数回答で聞いた。「従業員の定着率や満足度を高めるため」が73.9%で最も多く、「社会的要請や業界の流れに対応するため」が36.8%、「経営理念や方針に基づいているため」が14.2%、「採用競争力を高めるため」が13.9%だった。

「業績が改善したため」は11.4%となっている。

同じ回答者1,046人の賃上げ率では、「1%〜2%未満」16.3%、「2%〜3%未満」18.5%、「3%〜4%未満」13.7%で、1〜4%未満を合わせると48.5%となった。4%以上は31.4%だった。

連合の2026春季生活闘争の最終集計では、賃上げ率は全体5.01%、300人未満の中小組合で4.69%だった。厚生労働省が7月28日に示した最低賃金の引き上げ目安も全国加重平均で4.9%となっており、本調査で示された賃上げ率の分布との違いがみられる。

賃上げ「効果があった」は47.5%、モチベーション向上83.1%

賃上げを実施した企業の回答者1,046人では、「とても効果があった」が7.3%、「ある程度効果があった」が40.2%で、合わせて47.5%が効果を感じていた。

一方、「どちらともいえない」は39.5%、「特に効果は感じていない」は13.1%だった。

具体的な影響について回答した496人では、「従業員のモチベーションが向上した」が83.1%で最多だった。「離職率が低下した」21.6%、「採用がしやすくなった」13.5%、「生産性が向上した」11.9%と続いた。複数回答による結果である。

賃上げの実施理由別に効果をみると、「業績が改善したため」とした企業では、「とても効果があった」16.0%と「ある程度効果があった」46.2%を合わせて62.2%だった。

「経営理念や方針に基づいているため」は55.1%、「従業員の定着率や満足度を高めるため」は52.1%。「社会的要請や業界の流れに対応するため」は41.5%だった。

賃上げ原資、「十分に確保できている」は12.7%

賃上げを実施した企業の回答者1,046人に原資の確保状況を聞いたところ、「十分に確保できている」が12.7%、「ある程度は確保できている」が46.9%で、合わせて59.6%だった。

一方、「あまり確保できていない」は26.2%、「ほとんど確保できていない」は7.2%で、合わせて33.4%となった。

原資の確保方法について回答した624人では、「売上拡大による利益の確保」が63.6%で最多。「製品・サービスへの価格転嫁(値上げ)」30.3%、「業務効率化・生産性向上によるコスト削減」17.9%と続いた。この設問は複数回答である。

賃上げ企業の57.8%が経営上の負担を実感

賃上げを実施した企業の回答者1,046人では、「大きな負担になっている」が12.1%、「やや負担になっている」が45.7%だった。合わせて57.8%が賃上げを経営上の負担と感じている。

負担による具体的な影響について回答した605人では、「人件費負担の増加」で「大きく影響している」23.6%、「やや影響している」66.3%となり、合わせて89.9%だった。

「営業利益の減少」は「大きく影響している」19.3%と「やや影響している」55.5%を合わせて74.8%。「広告費や設備投資など他予算への圧迫」は8.1%と35.7%を合わせて43.8%だった。

賃上げ促進税制、「制度を知らない」が48.5%

賃上げを実施した企業の回答者1,046人に賃上げ促進税制の活用状況を聞いたところ、「制度を知らない」が48.5%と最も多かった。

「活用している」は9.2%、「活用を検討している」は9.9%、「制度を知っているが、活用する予定はない」は17.9%、「自社が対象になるかわからない」は14.5%だった。

持続的な賃上げには原資確保も課題

フォーバル GDXリサーチ研究所所長の平良学氏は、中小企業の賃上げについて、「行うかどうか」だけでなく、「継続できる原資をどのように生み出すか」が問われる局面に入っているとしている。

売上拡大や価格転嫁、業務効率化によるコスト削減などを通じた「本業で稼ぐ力」に加え、賃上げ促進税制などの公的支援を活用する重要性を指摘した。

賃上げを検討する企業は、実施率だけでなく、売上・利益、価格転嫁、生産性、利用可能な支援制度をあわせて確認したい。今回の結果は、自社の賃上げが継続可能な水準かを見直す材料の一つになる。

調査主体:フォーバル GDXリサーチ研究所 調査期間:2026年6月1日~2026年6月30日 調査対象者:全国の中小企業経営者 調査方法:ウェブでのアンケートを実施し、回答を分析 有効回答数:1,653人

出典:【フォーバル GDXリサーチ研究所調べ】