「子どものころから通っていた和菓子屋が、閉店していた」。そんな知らせに寂しさを覚えた人もいるのではないだろうか。小豆や砂糖などの原材料が値上がりする一方で、日常の茶請けとして買われる和菓子は、値上げに踏み切りにくい。
帝国データバンクによると、2026年1~9月の和菓子店の倒産は22件で、年間27件と過去最多だった2025年を上回るペースで推移している。老舗にも広がる苦境の背景を順に確かめていく。
和菓子店の倒産、2026年1~9月は22件|前年同期を上回る
帝国データバンクが「和菓子店」の倒産発生状況を調査・分析したところ、2026年1~9月に発生した倒産は22件だった。集計対象は、負債1,000万円以上で法的整理となった企業である。
2025年の年間倒産件数は27件と、これまでで最も多かった。2026年は9月末時点で22件となり、前年同期の19件を3件上回っている。
倒産件数の増加には、原材料高による収益圧迫に加え、職人の高齢化による技術承継の困難化、店舗や工場の新設に伴う設備投資負担などが影響している。また、コロナ禍で借り入れた資金の返済負担も重なり、経営環境は厳しさを増している。
業歴100年以上の老舗も倒産、2020年以降の倒産138件のうち24件
2026年には、長年地域に親しまれてきた老舗の和菓子店でも倒産が相次いだ。
看板商品の「加賀の巻絹」で知られた高砂屋(石川、破産)や、「よこすか焼き」などで知られたいづみや(神奈川、破産)では、人口減少や消費者ニーズの変化に加え、原材料価格の上昇による採算悪化が重なり、経営が行き詰まった。
2020年以降に発生した和菓子店の倒産138件を業歴別にみると、業歴100年以上の企業は24件で、全体の17.4%を占めた。
さらに、業歴50年以上の企業は半数に上り、長い歴史を持つ和菓子店の倒産が目立っている。
小豆や砂糖、もち米の価格上昇|値上げ後の販売減少も負担に
和菓子店の倒産や閉店が相次ぐ背景の一つに、和菓子特有の「値上げの難しさ」がある。
和菓子は日常の茶請けや地域の贈答品として購入される機会が多く、嗜好品としての側面が強い洋菓子などに比べて、価格改定への抵抗感が生じやすいとされる。
一方、主要な原材料である小豆や砂糖、もち米などの価格は上昇傾向が続いている。包装資材や光熱費、人件費の上昇も経営を圧迫している。
こうした状況を受け、値上げに踏み切った和菓子店もある。しかし、値上げ後に来店頻度が低下したり、販売数量が減少したりするケースもみられる。
仕入価格の上昇分を十分に販売価格へ転嫁できず、苦境に陥った和菓子店は少なくない。
贈答需要の縮小や職人の高齢化|技術承継も課題に
需要面でも和菓子店を取り巻く環境は厳しい。
若年層の和菓子離れが指摘されるなか、主な顧客層の高齢化が進んでいる。さらに、冠婚葬祭の簡素化や手土産需要の減少によって、贈答向け需要は縮小傾向が続いている。
製造現場では、菓子職人の高齢化によって生産量を維持できなくなるケースもある。
代表者の体調不良や職人の引退をきっかけに事業継続が困難になる例もみられ、和菓子づくりに必要な高度な技術を次の世代へ引き継ぐことも課題となっている。
ネオ和菓子やネット通販で新たな需要を開拓する動きも
厳しい経営環境が続く一方で、新たな需要を取り込み、業績を伸ばす和菓子店もある。
観光地でインバウンド需要を取り込む店舗のほか、コンビニやスーパー向けのOEM製造(他社のブランドの商品を受託して製造する仕組み)、ネット通販やふるさと納税を通じて販路を広げる事例がみられる。
商品開発では、写真映えや新食感を楽しめる「あんことチョコレートの組み合わせ」などの「ネオ和菓子」、フルーツ大福、わらび餅といったトレンド商品を通じて、若年層の顧客を開拓する動きもある。
老舗として培ってきたブランド力だけに頼らず、伝統の味や技術を守りながら、販路の拡大や新商品開発を通じて需要を取り込む取り組みが進んでいる。
値上げが難しく、職人の引退も重なるなか、ふるさと納税の返礼品など新しい販路や商品で踏みとどまる店もある。手土産や季節の菓子を選ぶとき、近くの店に足を運んでみるのも一つの選択肢だ。
調査概要 集計期間:2000年1月1日~2026年9月30日 集計対象:負債1,000万円以上・法的整理による倒産 対象企業:菓子製造(小売を含む)のうち「まんじゅう」や「干菓子」、「練り切り」など和菓子を製造する企業 調査方法:帝国データバンクが継続的に収集・蓄積している倒産情報を基に、集計対象期間内に発生した倒産件数および負債総額を集計
