日本企業に足りなかった「経営力」
では、日本企業が再び世界で成長するために、何が必要なのか。早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は、日本企業が失った競争力の正体を「経営力の欠如」だと指摘する。
「日本企業には優れた技術や現場力がある。しかし、その技術を使って『儲ける力』、すなわち経営力が圧倒的に弱い」
1960~80年代、日本の製造業は海外で生まれたイノベーションを取り入れ、高品質化、小型化、低価格化することで世界市場を席巻した。強い「現場」が企業を勝たせることのできた時代だった。
しかし、その成功体験の裏で、経営そのものを鍛えることが十分ではなかったと入山教授はみる。「日本企業では経営トップの座が社内出世レースの『ご褒美』と化し、2年といった短期任期制の事なかれ主義が定着した」
世界の競争ルールが変わった今、求められるのは既存事業を磨くだけでなく、不確実な領域へ人材や資金を振り向ける決断力だ。そしてAI時代には、もう一つ重要な力があるという。
「正解のない時代において決断を下し、組織を動かす最後の鍵となるのは、ロジックではなく人間の『感情』だ。AIが論理的最適解を導き出す時代だからこそ、対人関係を円滑にし、情熱と感情で人を動かす『感情労働』の価値は高まる」
さらに、新しい領域への「知の探索」を続けるには、「自分たちは何のために存在し、いかなる未来を創るのか」というビジョンやパーパスが、経営陣から現場まで「腹落ち」していることが不可欠だと入山教授はいう。
優れた技術を持つだけでは世界では持続的に勝てない。その技術をどこに振り向け、どう収益につなげ、組織をどう動かすか。日本企業に問われているのは、まさにその「経営力」なのである。
※入山章栄教授のコメントは、動画「WORLDWISE」での発言をもとに構成しています。
執筆:安藤智彦
参考文献
ニコラス・スミス氏
Financial Times
“Buyout firms play the long game beyond Tokyo”(2025年10月)
https://www.ft.com/content/9ddf07d3-9550-4a2b-816a-b54ad9fba727
CLSA Official Channel
“Nicholas' insights on the Money Talk Podcast”
https://www.youtube.com/watch?v=FRS5i56tu78
ウリケ・シェーデ教授
The Business Reinvention of Japan, Stanford University Press
https://www.sup.org/books/title/?id=32517
同教授 オフィシャルサイト
https://www.ulrikeschaede.com/businessreinvention
100年企業戦略オンライン
『日本は決して終わっていない。「失われていない30年」を経て』