それでも世界は日本企業を見直し始めた

もっとも、世界の投資家や専門家が日本企業を「過去の存在」とみなしているわけではない。

むしろ近年、日本企業を見る目には変化が起きている。その一つが企業統治改革だ。

東京証券取引所は2023年、上場企業に対して資本コストや株価を意識した経営を要請した。とりわけPBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る企業の多さは、日本企業が資本を十分に有効活用できていないことの象徴として注目された。

こうした改革と並行して、自社株買いや増配など、株主還元を強化する企業も増えている。

CLSAの株式ストラテジスト、ニコラス・スミス氏も、日本企業の資本効率改善に向けた動きに注目している。同氏はCLSAのポッドキャストで、東京証券取引所による要請などを背景に、企業が蓄積してきた資金が配当や自社株買いへと向かっている状況を指摘している。

こうした変化は、日本企業の評価を見直す一つの材料となっている。

そして、もう一つの再評価が、日本企業の「見えない強さ」である。

カリフォルニア大学サンディエゴ校のウリケ・シェーデ教授は、著書『The Business Reinvention of Japan』などで、日本企業が最終製品の市場から後退する一方、素材、精密部品、製造装置など、グローバルなハイテク産業を支える重要領域へと事業を再構築してきたことを指摘している。

かつてのようにソニーやパナソニックなど日本ブランドの完成品が世界中の家庭に並んでいなくても、その製品をつくるために不可欠な素材や部品、装置のなかには、日本企業が高い競争力を持つものが少なくない。

つまり日本企業は、世界市場から消えたのではない。消費者から見えにくい場所へと、戦う場所を変えていたのである。