人事評価は給与や昇進を決めるだけでなく、日々の仕事がどう見られているかを知る機会でもある。

リクルートマネジメントソリューションズが会社勤務の正社員328人を対象に「人事評価と職場における感謝・称賛に関する実態調査」を実施したところ、評価制度を「重要」「とても重要」とした人は62.2%だった。一方、「満足」「とても満足」とした人は23.2%にとどまった。

評価制度の重要性を感じている人が多い一方、実際の満足度との間には大きなギャップがある。特に、周囲への支援や成果が数字などに表れにくい仕事が、評価されているかどうかが、働く人の意識に関係している。

この結果は、社員の仕事のモチベーションの向上や職場の人材定着のために何に注力すれば良いかの参考になる。

モチベーション低下、「評価が低い」は29.3%

仕事をする上でのモチベーションが低下する要因としては、どのようなものがあるのだろうか。

今回の調査では、「給与が上がる見通しがないこと」が36.3%、「給与が低いこと」が34.8%で上位となった。

一方、「評価が低いこと」は29.3%、「見えにくい貢献が認められないこと」は26.8%、「公正に評価されていないこと」は25.3%だった。

給与に関する項目だけでなく、評価のされ方や、成果として表れにくい貢献が認められるかどうかも、モチベーション低下につながる要因として挙がった。

評価制度は「重要」でも満足度23.2%

人事制度において社員が重視していることと、満足度にはどれくらいの差があるのだろうか。

調査では、人事制度の重要度については、賃金制度が75.9%、評価制度が62.2%、昇進・昇格制度が51.5%だった。

一方、満足度は賃金制度29.6%、評価制度23.2%、昇進・昇格制度24.4%。評価制度では、重要度と満足度の差が大きくなっている。

では、評価制度について、勤務先が重視している要素と、社員が重視してほしい要素にはどれくらいの差があるのだろうか。

調査では、勤務先が重視していると思う要素の上位は「評価基準が明確であること」34.8%、「評価結果が処遇に適切に反映されていること」29.9%、「チームへの貢献が見られていること」28.4%だった。

一方、自分が評価に納得するために重視されることが望ましい要素では、「評価基準が明確であること」が37.5%、「評価結果が処遇に適切に反映されていること」が34.1%、「評価者によるばらつきが小さいこと」が30.5%となった。

特に差が大きかったのは、「評価者によるばらつきが小さいこと」の+8.9ポイントと、「直接評価につながらないが、重要な仕事も見られていること」の+8.3ポイントだった。

評価理由の説明がワーク・エンゲージメントと関係

調査では、直近の自身の人事評価については、満足計が53.0%、不満足計が47.0%だった。

評価に関する期待が実際に満たされている人と、満たされていない人のワーク・エンゲージメントを比較すると、多くの項目で充足群の方が高い傾向が見られた。

ワーク・エンゲージメントとは、従業員が仕事に対してポジティブで充実した心理状態にあることを指す概念だ。なかでも差が大きかったのは「評価理由が説明されていること」で、充足群3.46に対して未充足群は2.48だった。

満足の理由には、自己評価との一致や妥当な評価、上司との定期的な話し合い、成長を評価されていることなどが挙がった。不満足の理由では、努力や成果が評価に反映されないこと、目に見える成果だけで判断されること、何が評価されているのか分からないことなどが挙がった。

「感謝の言葉」は56.7%、見えにくい貢献は27.7%

評価制度に加えて、感謝・称賛の言葉も、仕事のモチベーションややりがいにつながる可能性がある。

調査では、仕事上の成果や貢献について、会社や職場の人から感謝や称賛を「伝えられたい」と答えた人は47.3%だった。理由としては、モチベーションややりがいにつながること、周囲が見てくれていることを実感できることなどが挙がった。

職場の状況を見ると、「日常的に感謝の言葉が交わされている」は56.7%だった。一方、「良い仕事や成果がきちんと認められている」は41.8%、「成果だけでなく、努力や工夫も認められている」は38.4%、「目立ちにくい貢献にも気づいてもらえる」は27.7%にとどまった。

会社によっては、感謝・称賛を伝えることを制度化しているケースもある。感謝・称賛制度の導入状況としては、「永年勤続表彰や休暇付与」が39.6%、「社員の成果や貢献を称える表彰」が30.5%。「社員同士で感謝や称賛を伝え合う仕組み」は14.9%だった。

職場における感謝・称賛の実感が高い群では、就業継続意向の平均が4.20だった。一方、実感が低い群は2.90で、1.30ポイントの差があった。

同調査では、感謝・称賛の実感が高い群で、ワーク・エンゲージメントが3.74、バーンアウトが2.71、離職意向が2.77だった。実感が低い群では、それぞれ2.77、3.43、3.51となっている。

評価への納得感、「見えにくい貢献」もポイント

評価制度への期待と実感には大きなギャップがあることが、今回の調査結果からわかる。

人事評価を受ける側にとっては、評価の結果だけでなく、「何を評価されたのか」「なぜその評価になったのか」を確認できることや、上司と対話できることが、評価への納得感に関係している。また、調査では「直接評価につながらないが、重要な仕事も見られていること」について、現在の勤務先よりも回答者本人が重視を望む割合が高かった。

評価制度への期待と実感のギャップを埋めるには、これらのポイントを押さえる必要がある。その上で、日常の仕事で「見てもらえている」と感じられる機会についても、社員のモチベーションや人材定着とあわせて考える必要がある。

調査概要:調査名「人事評価と職場における感謝・称賛に関する実態調査」 調査日:2026年5月15日~17日 対象者:会社勤務の正社員で、自社の人事評価制度があり、勤務先の従業員規模が300名以上の人。有効回答数は328名。 調査方法:インターネット調査