女性の起業家たちを繋げたい。
こうして服部さんは人生の次のステージへと歩みを進めた。20年、パンデミックが始まった頃にDatawordsの経営から退き、次の計画を考えていた矢先、友人からコロナ禍で苦境に立たされているスタートアップを支援してほしいと声をかけられた。服部さんはその後、エンジェル投資家としてスタートアップの成長や海外展開を支援。
「この時期にいろんな方との出会いがあって、魅力的な女性起業家がたくさんいることに気づいたんです。メディアでは男性のCEOばかりが取り上げられていて、女性に光が当たっていない。そこで女性たちのコミュニティを作りたいと思い、24年にGlobal Women Founders(以下、GWF)を立ち上げました。国籍や年齢、肩書きに関係なく、女性起業家たちが緩やかに繋がりながら楽しくアピールできる場を提供しています」
本拠地をフランスに置きながら、非営利団体として活動を続ける中で気づいたことがある。「私もこれまでロレアルやDatawordsという肩書きのもとで仕事をしてきましたが、20年から肩書きがなくなりました。すると周りの反応がまったく違うんです。特に日本のビジネスの世界では、会社に所属していないと興味を持ってもらえない。女性の起業家たちもみな同じ思いを持っています。会社というのは依然として男性社会なんだと感じます」
また、所属するコミュニティを持たない女性起業家の多くは孤独を抱えているという。「そうした女性たちが求めているのは、自分の成功談をアピールする場ではありません。起業している人も、これから起業したい人も、気軽に話せるオープンなコミュニティが必要なんです。GWFでは年に1回オフラインの集いを開催していて、ここでは名刺は必要ありません。ゲストスピーカーやアーティストを招いて、ワインやシャンパンを飲みながら楽しく交流しています」
もともとは40代以上の女性をターゲットにしていたGWFだが、始めてみると20代女性の参加者も多かった。「20代の女性たちは、ロールモデルがいないため将来がすごく不安だと言うんです。起業するにはどうしたらいいのか、キャリアと子育ての二択しかないのか、といった悩みを相談できる人がいない、と」
混沌とした世界情勢の中で漠然と不安を抱える若い世代、人生の第2ステージに踏み出そうとしている40代以降の女性。服部さんは自身の体験をもとに、さまざまな垣根を取り払って一歩踏み出したい女性たちを繋げようとしている。「フランスはもともと多国籍な人種が集まっているのですが、日本でも在日外国人を交えてイベントができればと思っています。20〜30人くらいの規模で、その後もネットワークが続くような会にしたいですね。また、いまヨーロッパは空前の日本ブームです。紹介されるのは日本の製品が主流ですが、私は日本人女性の魅力をもっと伝えたいと思っています」
自分の世界の外に出て、仲間と思いをシェアする。
一歩踏み出したいと考えている女性たちへ向けて、服部さんはこうアドバイスする。
「私がいつも大事にしているのは、楽しい人生を送りたいということ。外見は変わっていくけれど、内面の年齢は自分で決めるべきだと思っています。もう40代だからと諦めたり、家族を優先して自分は外に出なかったりするのは、外部の物差しで決めているから。自分の世界を広げるためにも、外の世界と繋がりを持つことが大切です。人は結局ひとりですし、人生にハウツーはなく、何が起きるかもわからない。だからこそ、多くの仲間と繋がり、お互いの思いをシェアすることで、人生は豊かになっていくと思います」
人にも言えないほど落ち込んだり悩んだりしたときは、ノートを開いて文字や絵を書くことを習慣としている服部さん。現時点で200ページ以上にも及ぶという。「私は決してポジティブな人間ではありません。悩みだらけで計画性もあまりなく、転んでばかりの人生です。起業家はパーフェクトなイメージを持たれがちですが、そんなことはないのです。いろんな生き方があるからこそ、世界は楽しくなるのではないでしょうか」
服部佳代(はっとり・かよ)
日本ロレアル、フランスロレアルを経てDatawordsを共同設立。2020年にDatawordsの経営から退き、エンジェル投資家としてスタートアップを支援。22年にJUKA JAPANを設立。肩書きに縛られない“第2章の生き方”を探究し、24年に国際コミュニティ、Global Women Foundersを立ち上げる。25年にはフランスで非営利団体として正式に登録。国籍や文化を超えて女性たちを繋ぎ、新しい働き方とライフスタイルを提案している。
https://www.globalwomenfounders.com/
取材・文:久保寺潤子 編集:フィガロジャポンBWA事務局


