理論や型を習得する、「大人の学び」がいまこそ必要。
リセットするために、具体的にはどんな方法があるのだろうか。
「40代女性のリセットに必要なのは『学び』ではないでしょうか。日本人は OECD(経済協力開発機構)のなかで成人学習率が低いというデータがあります。時間がないというのは言い訳になりません。大学の成人向け講座やオンライン講座、夜間大学を受講したり、ポッドキャストで情報を得たりするなど、方法はいくらでもあります。私自身、毎朝ご飯を作りながらポッドキャストで経済や世界情勢についてインプットしています。大学院でMBAを取ることばかりが学びではありません。自分の専門分野や興味のあることを3カ月くらいかけて体系立てて学ぶのもよいでしょう。ふだんの仕事とは違った視点で、理論や型を習得するのがポイントです。この時期に身に付けたことは、きっと財産になると思います。加えてAIを正しく使いこなすことも、これからのキャリア形成には不可欠ですね」

日本はOECD参加国のなかで成人学習への参加率が低い。なかでも大学や専門教育など公的に認められた資格に繋がる「フォーマル学習」への参加率は1%で、調査参加国のなかで最低となっている。
*OECD Trends in Adult Learning, Executive Summary 2023 (https://www.oecd.org/en/publications/trends-in-adult-learning_ec0624a6-en/full-report/where-what-and-how-are-adults-learning_59e53872.html)の「Figure 1.2. Non-formal learning outstrips formal learning worldwide」をもとに作成
スキルアップを目指す仲間をつくる。
体系的な学びや情報のアップデートは40代のリセットに欠かせないが、一方で他者との対話もまた、自身を客観的に見直すきっかけになると池原さんは言う。
「私が運営しているキャリアメンターのスクールでは、多様な業種の人が集まって対話し、お互いメンタリングの練習をします。ここでは利害関係がいっさいないので、ストレスなく本音で話すことができる。上司にも言えない仕事の悩みを吐露している人もいます。同じ目的で繋がっている学びの場というのは、自分が成長できるサードプレイスなのです」
同僚や上司でもなく、友達でもない。ともにスキルアップを目指す利害のない他者と越境して繋がることで、自己を見つめ直すことができるという。
「メンタリングはコーチングと違って、自分の経験を1対1でシェアしてアドバイスするもの。他人との対話のなかで新しい視点を得た途端に、急に世界の見方が変わることがあります。お互いの経験をシェアし合うことで、新しいメガネを手に入れることができるのです」
女性の働き方は、時代を反映したトレンドとして取り上げられやすいが、近年ようやく正当な評価が行われるようになってきた、と池原さん。
「これまでの日本の女性の働き方を振り返ると、『ゆるく働くのが素敵』とか『楽して稼ぎたい』とか、『キラキラ系のお仕事』とかいくつかのブームがあったように思います。いずれにしても『女性がそんなにキャリアアップしてどうするの?』という風潮がありました。最近は長く働いたり地道にキャリアを積み上げたりすることに対して、女性自身が後ろ向きではなくなってきたように感じます。いまこそ女性が主体的になれるチャンスです」
これから先の人生に、見たい景色を思い描く。
最後に、40代女性が自分自身との対話を始めるための心構えを聞いた。
「これまでに積み上げてきたキャリアをいったん受け止めたうえで、いまがゼロ地点に立っていると仮定し、『これから先どんな景色を見たいのか』と自問してみてください。人は見たい景色の方に近付いていく性質があります。その景色を鮮烈に描くことで、チャンスや情報はつかみやすくなると思います」
これから先の人生を見据え、40代で新たなスタート地点に立つ。あなたが見たいのはどんな景色だろうか。
池原真佐子(いけはら・まさこ)
株式会社Mentor For 代表取締役社長/一般社団法人ビジネス・キャリアメンター協会(BCMA)代表理事。早稲田大学大学院を卒業後、PR会社、NPO、コンサルティング会社に勤務し、INSEAD(Executive Master in Change)の修士号を取得。2014年に起業し、出産、海外生活、ワンオペ育児を経験する中で、女性のキャリア形成におけるメンターの重要性を痛感。2018年からはリーダー育成に特化した社外メンターマッチングや、社内メンター制度支援事業を開始。メンタースキルを日本で先駆けて体系化し、学習できるオンラインスクール「ビジネス・キャリアメンターアカデミー」も運営。近著に『相手に寄り添いながら成長を後押しする「メンター」の教科書』(日本実業出版社)がある。
https://mentorfor.jp/
取材・文:久保寺潤子 編集:フィガロジャポンBWA事務局
