「ロボットが自律的に判断して動く」と聞いても、まだ映画の中の話のように感じる人もいるだろう。周囲の状況を捉え、判断して動くAIをロボットや自動車、ドローンなどに組み込む「フィジカルAI」。アックスタイムズは、その世界市場が2025年の2兆1,810億円から2040年には189兆円に拡大すると予測した。

市場は、ソフトウェアや計算基盤などの「フィジカルAI基盤」と、ヒューマノイドロボットやFAロボット、自動車などの「主要ハードウェア」で構成される。製造、物流、建設、自動車など幅広い業界に関わるテーマで、生活者に身近な移動や配送を担う機器にもつながる。AIを画面の中だけでなく、現実の機械や設備に実装する動きの規模感を示す調査だ。

2040年の世界市場は189兆円、2025年比86.7倍

アックスタイムズの推定によると、フィジカルAI基盤市場は2025年の3,000億円から2040年には30兆円となり、2025年比で100.0倍に拡大する予測だ。

主要ハードウェア市場は、2025年の1兆8,810億円から2040年には159兆円となり、84.5倍を見込む。両者を合わせたフィジカルAI市場は、2025年の2兆1,810億円から2040年に189兆円となり、86.7倍に拡大すると予測している。

フィジカルAI基盤には、ソフトウェア、計算基盤、開発基盤などの構成技術が含まれる。2025年時点では、自動車やFAロボットなどの先行分野を中心に市場が形成され、AIモデル、AI半導体、シミュレーション、開発基盤などの需要が拡大しているという。

主要ハードウェアは10分野を対象に算出

主要ハードウェア市場は、ヒューマノイドロボット、四足歩行ロボット、FAロボット、搬送ロボット、建設機械、農業機械、乗用車・ロボタクシー、トラック、ドローン、配送ロボットの10分野を対象に、メーカー出荷ベースで算出した。

2025年時点では乗用車・ロボタクシーが市場をけん引している。その他のハードウェアは実証や限定導入が中心だが、同社はAIモデルやセンシング技術、半導体性能の向上、量産化による価格低下、制度整備や標準化などが市場拡大を後押しするとしている。

2030年代には複数のハードウェアが商用レベルで量産体制に入り、社会実装が本格化するとの見通しを示した。

米国・欧州・日本・中国で異なる市場動向

地域別では、米国には技術力の高い企業が多く、市場をけん引すると予測する。日本では製造業や物流業を中心に導入拡大を見込み、欧州では制度整備、中国では国策による投資や実証、事業化を背景に市場が拡大するとみている。

調査報告書全体では、ソフトウェア・システム1技術、主要ハードウェア10技術、タスク特化型ハードウェア9技術の計20技術を調査対象とした。また、技術開発のグローバル事例709件を収録したExcelデータセットも用意している。

調査の前提は「1ドル=150円」、日本は世界の内数

189兆円という数字を読むうえで、押さえておきたい前提がある。

調査期間は2026年4月から7月で、業界インタビューと公開情報調査をもとに専門市場調査員が整理・分析した。市場規模の算出では1ドル=150円を前提とし、2026年以降の為替変動と物価変動は考慮していない。

市場規模やフロー、ストックは世界と日本を対象としており、日本は世界市場の内数として扱っている。日本の市場規模は、世界の189兆円の中に含まれている数字であり、世界と日本を足し合わせたものではない、という点に注意したい。

フィジカルAIは企業や研究者の話に見えがちだが、配送ロボットやロボタクシーという形で、生活者の日常にも入ってくる技術でもある。

市場の将来予測を見る際は、189兆円という規模だけでなく、対象となる技術や市場の定義、為替などの算出前提もあわせて確認したい。関連する事業や技術開発に携わる人は、自社に近い分野の市場動向を確認する材料にできそうだ。