現代のニーズに応える「低アルコール」の潮流

――最近、「少し度数が低めで飲みやすい日本酒」も増えてきましたよね。

低アルコールの日本酒は、今の最も大きなトレンドかもしれません。以前の日本酒はアルコール度数16〜17度が標準でしたが、今は13〜14度、中には9〜11度というものも登場しています。

これは弊社の社長(長谷川浩一氏)が以前から提唱していたことでもあるのですが、「ワイン(13度前後)と同じくらいの感覚で飲めなければ、食事中に何杯も日本酒を楽しむことはできない」ということです。

――低アルコールのお酒は、どうしても味わいが薄くなるイメージがありますが……

そんなことはありませんよ。そこが造り手の腕の見せ所なんです。加水するのではなく、原酒で低アルコールでもしっかり味が乗るように醸造する。非常に高度な技術です。たとえば、石川県の「吉田蔵 u(よしだぐら ユー)」(吉田酒造店)などは、アルコール度数12%ほどですが、清涼感のある爽快さと繊細な旨みがあり、体にすっと馴染みます。

また、高知県の「酔鯨(すいげい)」(酔鯨酒造)も、かつては“土佐の男酒”的なしっかりとした度数が魅力でしたが、最近では新たなラインとして、14度前後の非常にフレッシュでモダンな「酔鯨TYPE25」などを打ち出しています。

――男っぽいイメージが強い高知のお酒も変化しているんですね。

その逆パターンもありますよ。普段、ついつい度数の低い日本酒に手が伸びがちな私も美味しいと思っているのが、明治10年創業の蔵・アリサワが醸す「文佳人(ぶんかじん)」です。こちらは流行りの低アルコールではなく、しっかりとアルコール度数がありつつ(約16.5度)、驚くほど爽やかです。

ご夫婦2人だけで酒造りをされているのですが、手間暇を惜しまず、1本ずつ瓶燗(びんかん)火入れを行うなど、その工夫とこだわりには目を瞠(みは)るものがあります。香りと甘みのバランスが気品に溢れていて、現代の日本酒の一つの完成形だと思いますね。

クラフト化する日本酒と伝統の再発見

――かつては焼酎文化が強かった九州エリアはいかがですか?

とても刺激的なエリアですね。最近のトピックスとしてはやはり熊本の「産土(うぶすな)」(花の香酒造)でしょうか。花の香酒造さんは、江戸時代の農業をリスペクトし、江戸期の肥後米の品種「穂増(ほませ)」というお米を復活させるところから始めています。

私も含め、弊社のスタッフも実際に田植えに参加させてもらうことがあるのですが、その情熱は並大抵のものではありません。出来上がるお酒は、搾りたてを瓶詰めしたガス感が心地よく、まるでテロワールを表現し尽くしたワインのよう。非常にナチュラルでチャレンジングな精神から生まれるお酒は、熊本という豊かな土地の物語と一緒に楽しむのに最適だと思います。

――伝統に目配せしつつ、時代に即したお酒を造る蔵元が増えているわけですね。

まさにそうですね。九州から北関東に飛びますが、栃木の「仙禽」(せんきん)なども、温故知新的な文脈が息づくお酒です。コシヒカリやササニシキなどのルーツとされる「亀の尾」を復活させ、酒米に用いています。

ほかにも関西なら奈良の「みむろ杉」(今西酒造)、中国エリアでは広島の「雨後の月」(相原酒造)など、全国各地の酒蔵で、かつての灘・伏見に代表される大資本の日本酒の対極にある、土地ごとの物語を体現したお酒が生まれています。

――これだけブランドがあると、店頭でどう選べばいいのか迷ってしまいます。はせがわ酒店では、どのような接客をされているのでしょうか。

私たちは「これが絶対の正解です」という押し付けはしません。その方が普段、どんなものを食べているか、どんなお酒を好んでこられたか、そこを伺ってから、蔵元の特徴や味わいについてご説明させていただいています。

――自分好みの日本酒に出合うためのポイントはありますか?

まずはテイスティングで自分の“推し蔵”を見つけてみるのが良いと思います。この日本橋店も、奥にテイスティングスペースを設けています。週替わりでおすすめのお酒をご紹介しているので、そこで自分に響く一本を見つけて連れて帰っていただきたいですね。

はせがわ酒店 日本橋店

住所:東京都中央区日本橋本町2-1-1 武田グローバル本社1 F TEL:03-6262-3111 営業時間:物販11:00〜20:00 平日ランチ11:30〜15:00(L.O.14:30)、平日BAR16:00〜20:00(L.O.19:30)、土曜BAR 13:00〜19:00(L.O.18:30) 定休日:無休(ランチ・BARは日祝定休)

ホームページ 

※20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。お酒は適量を心がけましょう。

<取材・文/田代智久 写真/橋本真美>