「あらごし」が起こしたリキュール革命

――梅乃宿といえば、梅酒や柚子酒などの「梅乃宿あらごし」シリーズの印象が強いです。日本酒蔵がリキュールに注力し始めたきっかけは何だったのでしょうか。

もともとは“雇用の安定”という側面が強かったんです。日本酒造りは冬がメインですが、夏場の仕事を生むために、2002年頃から日本酒仕込みの梅酒造りを始めました。当時、蔵人がリキュールを造るなんて……という批判的な声もありましたが、お客様の声はそれとは逆で、大きな反響を得ることができました。

――「あらごし」特有のあの果実感は、どのように生まれたのですか?

梅酒を造る際に出る梅の実は、以前は廃棄していたのですが、「これを細かく潰して混ぜたら美味しいのでは?」という、今でいうSDGs的な発想が原点です。飲んでみると、圧倒的な果実感と食感があった。これがあらごしのルーツです。

――梅やフルーツのお酒は巷に多くありますが、梅乃宿の「あらごし」は何が違うのでしょうか。

私たちが重視しているのは「ブレンド技術」です。日本酒のプロが造るからには、ベースとなる日本酒の質の良さは当然として、アルコール特有のカドを感じさせず、果実の旨みを最大限に引き出したい。まるでフルーツをそのまま味わっているようなブレンドには徹底的にこだわりました。

この「お酒なのに、お酒臭くはない」という絶妙なバランスこそが、女性や、あまり日本酒に馴染みのない30~50代の方々に支持されている理由だと分析しています。

ファンと共創する「梅乃宿ループ」

――最近では、ファンコミュニティ「梅乃宿KURABU」の運営など、消費者との距離が非常に近いのも、梅乃宿酒造の特徴の一つですね。

2022年の蔵移転が大きな転換点でした。コロナ禍で飲食店向けの出荷が少なくなる中、お客様と直接つながるD2C(直接販売)に本腰を入れたんです。コミュニティには梅乃宿の熱心なファンがいますが、彼らと一緒に商品開発も行っています。

――実際に商品化された例はありますか?

ファン投票や、実際に試飲してもらって味わいを決めた「晴れの日ライムミント」や、商品の企画段階から参加してもらい商品化した日本酒「前略、葛城山の麓で」などがあります。

ECでテスト販売し、ファンの生の声を拾って改良を加える。その実績を持って卸先や飲食店様へ展開していく――。私たちはこれを「梅乃宿ループ」と呼んでいます。このサイクルがあるからこそ、市場のニーズと乖離しない、今の時代に求められる一杯を提案し続けられると自負しています。

――今後の展望についてもお聞かせください。海外展開も加速していますね。

現在、約25カ国に展開していますが、特にアジアや欧州では「あらごし ゆず」の人気が凄まじいです。今後は、海外で人気を博しているジャパニーズ・ウイスキーのような、「ジャパニーズ・リキュール」という新しいカテゴリーを世界に定着させたいと考えています。そもそも日本のフルーツの美味しさは海外でも評価が高いですからね。

また、国内では“健康”や“ソバーキュリアス”(飲めるがあえて飲まない層)などの潮流に合わせ、トマトやニンジンなど野菜を使ったリキュールや、アルコール入りと見紛うほどクオリティを持つノンアルコール商品の開発にも力を入れています。

――最後に、どんなお酒をどう楽しめばいいのか、迷っている読者へメッセージをお願いします。

お酒はもっと自由でいい、というのはお伝えしたいことの一つですね。例えば、梅乃宿のあらごしをアイスにかけてもいいし、カクテルにしてもいい。私たちの役割は“お酒の正解”を押し付けることではなく、飲む人の日常を少しだけワクワクさせること。

伝統に縛られず、常に新しい驚きを届け続ける梅乃宿の挑戦に、これからも注目していただければ嬉しいですね。

梅乃宿酒造

住所:奈良県葛城市寺口27-1 営業時間:10:00~18:00(直営店 見学/体験) 定休日:不定休

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※20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。お酒は適量を心がけましょう。

<取材・文/田代智久 写真/草地麻巳>