──日本の電源構成をみると、火力が約7割、再エネが約2割、原子力が約1割です。今後は再エネと原子力を伸ばしていく方針のようですが、どう見られますか。
再エネを伸ばす方向性は正しいと思います。日本は、北海道から沖縄まで緯度の差があって気象条件が多様ですし、海岸線の長さは世界有数です。
ある地域が曇っていても別の地域は晴れているので、送電網で補い合える。海岸線が長ければ、それだけ洋上風力のポテンシャルも大きい。日本人はもっと自国の地理的なポテンシャルを認識すべきだと思います。
一方で原子力は、冷静に考える必要があります。ウランはほぼ全量を輸入に頼っていて、燃料に加工する過程ではロシアの企業が深く関わっています。エネルギー安全保障を本気で考えるなら、自国で地産地消できる再エネを主軸にするのが妥当でしょう。
学生時代、原子力工学を専攻した身としては、とても複雑な思いですけどね。ただ、当時から「再エネの技術が発達したら、俺たちの出番は終わるな」と仲間内でもよく話していたので、その時が来たということでしょう。
私が希望を持っているのは日本の民間の動きです。不動産や金融業界はものすごく再エネに前向きで、再エネ電力で全館をカバーするビルも増えている。民間の活力でインフラを変えていく。それが日本に残された、最も現実的な道じゃないかと思います。
──再エネが本格的に普及した先には、どんな未来が待っていますか。
実はものすごく明るい未来が待っているんですよ。再エネインフラは、安定供給のために必要量より多めに作ります。風が強くてカンカン照りの日には、電気がとても余るわけです。その余剰電力で、クリーンな水素を大量に生産できます。
それで何ができるかというと、今の石油由来のプラスチック製品の多くを、水素を活用した製法で代わりに作れるようになるんです。しかも、原料に大気中のCO2を使うので、CO2を減らしながらプラスチックを大量に生産できる。石油化学工業がまるごと「水素化学工業」に置き換わる時代が、10年くらいでやってきますよ。
今は夢のような話に聞こえるかもしれませんが、再エネインフラが確立すれば、これは現実になると私は考えています。問題は、日本がその未来の側にいるか、取り残される側にいるかです。
加谷珪一
経済評論家。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。『お金持ちの教科書』(CEメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)など著書多数。近著に『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』(幻冬舎新書)
執筆:瀬戸義章
撮影:遠藤宏
