──再エネ用蓄電池や太陽光パネルと言えば、中国が圧倒的なシェアを占めていますね。

 

ここ10年の中国の動きはすさまじいです。ちょうどAIによる電力制御技術や蓄電池技術が実用化レベルに達した時期に、ウクライナ侵攻によるエネルギー危機が重なり、中国は再エネシフトを一気に加速させたんです。

その結果、今回のホルムズ海峡封鎖でも、石油不足の影響をあまり受けていません。もともと調達先が多様化されていて再エネ比率も高いので、西側のようなダメージがないわけです。

この様子を世界が見ていて、「やはり再エネだ」と認識が変わり始めています。「再エネは不安定でコストが高い」というのは古い認識で、最新のスマートグリッドと蓄電池を使えば、安定供給が実現可能なレベルに達しています。

  • 加谷珪一

──中国以外にも、再エネシフトで注目すべき国はありますか。

正直、私も驚いたのですが、いつの間にかパキスタンが再エネ大国になっています。私がそれに気づいたきっかけは、パキスタンが米イラン交渉の仲介役を買って出たことでした。東南アジアや韓国のメディアはエネルギー危機一色で、「外国のことなんかに、かまっていられない」という状態です。

パキスタンは経済的に脆弱な国なので、本来なら真っ先に影響を受けるはず。なぜ外交上の大役が果たせるのか?

調べてみたら、住宅への太陽光パネルの導入が急速に進んでいることが分かりました。

  • パキスタン・カラチ市内の太陽光パネル

    パキスタン・カラチ市内の太陽光パネル Hexzain -shutterstock

家という家に太陽光パネルが並んでいて、EVも広く普及しています。しかも政府主導じゃないんですよ。停電や燃料不足に何度も苦しんできた国民が「もういい加減にしてくれ」と、自ら太陽光パネルとEVを設置し始めた結果なんです。

パキスタン政府は2030年までに電源構成の60%を再生可能エネルギーとする方針を立てていますが、これは民間の動きを後追いで認めただけにすぎません。

再エネシフトの結果として、パキスタンは外交上の大役を果たす余裕を持てました。エネルギーを外国に依存しなければ、供給途絶に振り回されることはありません。

もはや再エネは環境問題の話ではなく、安全保障の重要ツールなんです。世界の認識はそこまで変わっています。